IPTVが秘めている可能性は膨大だ。だが、その可能性の実現となると、ときに道のりは遠く感じられる。
世界中で大規模なIPTVの配備が始まってから1年が経つが、新機能の実現への歩みはのろい。しかし、MicrosoftがこのほどリリースしたIPTVソフトウェアの新版は少なくとも、IPTVというテクノロジがもつ大きな可能性を現実のものにする小さな一歩にはなりそうだ。
Microsoftは米国時間6月18日、シカゴで開幕した通信展示会「NXTcomm」(6月18日〜21日)で、同社IPTVソフトウェアの第3世代となり、名称も新たにした「Microsoft Mediaroom」を発表した。Mediaroomは、通信事業者がIPインフラ上でテレビ番組を配信するのに利用でき、将来的には、事業者が新しい双方向のユーザー体験を創出できるように支援する新機能を複数備える。しかし、消費者が今すぐ実感できる機能はあまりない。
IPTVは、今ようやく本格始動したばかりだ。この1年の間、IPTVテクノロジの分野で先頭集団にいるMicrosoftは、米国のAT&TやドイツのDeutsche Telekomなど10の通信事業者に向けて同社のソフトウェアおよびミドルウェアを配備しはじめている。
登場の最初から、IPTVは人々のテレビの見方を変えると言われてきた。テレビ番組と双方向で通信できるし、スポーツ中継を見ているときには複数のカメラアングルが選べ、映画やテレビ番組をほぼ無限のデジタルコンテンツから検索して視聴でき、写真やホームビデオの共有もできる。さらに、より高解像度のコンテンツが利用でき、ボタンのクリック1つで地元の最新道路交通情報がわかり、ショッピングさえテレビできるようになる。
しかし、最先端の機能はそう簡単に利用できるようになるものではない。たとえば、AT&Tの「U-verse」は、サービスの提供を開始してからほぼ1年が経過したが、いまだケーブルテレビのプロバイダーがすでに提供しているものとさほど違わないようだ。
「IPTVは今やっと、実験段階を抜け出たばかりといったところだ。Microsoftや通信業界の各社も、まだIPTVテクノロジの外縁で試行錯誤を繰り返している。したがって、まだ時間はかかる」と、Yankee Group Researchのシニアアナリストを務めるVince Vittore氏は話す。
AT&Tとはどの市場でも直接競合してはいないが、Verizon Communicationsは、従来の動画配信テクノロジとIPを組み合わせるハイブリッド型のアプローチを採っている。Verizonは、「Fios」と呼ばれる新しいオール光ファイバーネットワークの構築を積極的に進めており、加入者数でも、提供する機能でもAT&Tのサービスより先を行っている。
AT&Tが遅れをとった大きな理由の1つは、同社が純粋にIPインフラ上でサービスを配信するために開発されたまったく新しいテクノロジを使用していることにある。最新技術にはバグがありがちなものだ。2007年に入ってAT&Tの幹部は、2006年末に同社のIPTV配備を縮小せざるを得なかった理由の少なくとも一部には、ソフトウェアの不具合があったことを認めた。AT&Tはかねてから、15ないしは20都市にサービスを提供する目標を掲げていたが、2006年末、全体で11都市に下方修正した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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