ネット上で著作権侵害と最も縁がなさそうな場所はどこだろう。Time WarnerやThe Walt Disney Companyの元最高経営責任者(CEO)Michael Eisner氏が後ろ盾になっているウェブサイトなら、まずそんな心配はないと思われる。
ところが、株式非公開企業であるVeoh NetworksのCEOを務めるDmitry Shapiro氏は、同社のビデオ配信サイトVeoh.comで、正式デビューからわずか1週間後には、さまざまな分野の人気番組の完全版のコピーが、何本も無許可で公開されていたことを認めている。しかしその責任は、Veoh Networksの側ではなく、コンテンツを投稿した人々にあるというのが同氏の言い分だ。
「われわれは、著作権で保護されたコンテンツが投稿されたら、ただちにそれを削除するという方針をはっきり示している」とShapiro氏は言う。「これは、コンテンツ公開の民主化にかかわる問題だ。今は、誰でもインターネットに動画を投稿できる。ときにはその素材が誰か別の人の所有物だということもある。われわれはこの問題を深刻に受け止めている」
Veoh Networksは、Eisner氏やTime Warnerといった投資家から約1200万ドルの資金を受け入れており、YouTubeを超える存在になることを目指している。同社の幹部たちは、大手ネットワークやメディア企業向けにロングフォーマットのビデオを配信することを目標に掲げ、Veoh NetworksのPtoP技術を使うと、コンテンツ制作者は高品質ビデオをより効率的に配信できると主張する。
もちろん、ここで考えなければならないのが、海賊版コンテンツをどう扱うかという点で、これまでにも、ビデオ共有やPtoPを手がける企業のほとんどがこの問題に直面してきた。各企業の幹部たちは著作権侵害をしないよう呼びかけていると言うが、ユーザーがそう簡単にこれに従うはずもない。法律では、企業は、著作権保有者から通知を受けた場合、著作権を侵害しているコンテンツを削除することが義務づけられているが、コンテンツを審査したり、積極的にサイトを監視したりする必要はない。
ロングフォーマットのビデオを配信するというVeoh Networksの野心に満ちた計画は、技術系企業とコンテンツ所有者との戦いに、新たな局面を付加することになる。YouTubeでさえ、著作権問題でさまざまなコンテンツ所有者からの激しい非難を受け、投稿できるビデオクリップの長さを10分以内に制限し、ユーザーが映画やテレビ番組の完全版をアップロードできないようにしようとしている。コンテンツ所有者は今や、映画や番組がまるごと掲載されてしまうことを心配しなければならなくなった。
「(Veohが)このままのやりかたで押し切ることをハリウッドが許すとは思わない」と、リサーチ企業Yankee Groupのアナリスト、Josh Martin氏は語った。「取り巻く環境が現在では違う。メディア企業はもう誤りを認識しているし、作品全編が投稿されることを黙って見逃すとは思えない。『著作権で保護される作品の投稿で初期の悪名をとどろかせた』YouTubeは、時と場所を得ていたのだということを忘れないことだ。同じことはもう起きないだろう」(Martin氏)
Veohの動画リストでは、Disneyが制作した1時間のアニメーション「シンデレラIII 戻された時計の針」(ただし同作品は週末に削除された)などのプロが制作した幅広い作品群や、英国対スペインの2時間に及ぶサッカー試合などが見つかる。またVeohではユーザーが広範な各種アダルト作品を探したい場合、「ファミリーフィルタ」を無効にすればいいだけだ。
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