ついに三木谷氏が批判に反撃--「楽天は会員ビジネスを展開する“超Web 2.0企業”」

島田昇(編集部)2006年10月04日 23時31分

 国内最大級のIT関連見本市「CEATEC」。2日目の10月4日には、ある話題の人物も講演の席に現われた。球団参入やTBSへの経営統合提案で“時の人”となった楽天の会長兼社長、三木谷浩史氏だ。

 三木谷氏はここ最近、マスコミの前になかなか姿を見せなくなった。ライバル視されていたライブドア前社長の堀江貴文被告が証券取引法違反の容疑で逮捕され、その風評被害をもろに受けたためだろう。多くのマスコミは楽天を当時のライブドアと同列に並べ、ネット企業というよりもM&Aと金融事業を柱にした企業と批判。三木谷氏がマスコミの前に出れば、「(マスコミは)ネガティブなことしか書かない」(楽天社員)という雰囲気が広がっていた。

三木谷浩史 「楽天のビジネスモデルは非常にユニーク」と語る三木谷浩史氏

 こうした中、登壇した三木谷氏は久々に楽天のビジネスモデルを自信たっぷりに紹介し、加えて楽天は先進的なWeb 2.0企業でもあり、ヤフーに対抗できる有力企業でもあるとの考えを提示。また、聴講者に渦中のTBSとの経営統合問題を連想されることを恐れず、動画事業に否定的な考えを持っていることを示唆する、踏み込んだ発言もした。

最後に勝つネット企業の条件は2つしかない

 まず、三木谷氏は楽天のビジネスモデルを「ネットビジネス」と「会員ビジネス」の2つに分け、仮にどちらが重要と考えているかを問われたら、「会員ビジネスである」と答えるとした。

 楽天の主力事業は仮想モールを軸としたEC事業と金融事業。ネット企業はトラフィックをいかに多く集め、それを軸にビジネス構築するのが主流だが、楽天は両主力事業で決済を伴うサービス利用者となる会員がベースに存在する。当然、トラフィックの拡大は重要なことだが、楽天にとってはむしろ、「いかに会員を低コストで獲得し、会員に決済の伴うサービスを利用してもらうか」の方が優先順位は高い。自らを会員ビジネスと語るのは、そのためだ。

 三木谷氏は「楽天は金融ビジネスが本業だと批判する声もあるが、そう呼ばれてもいいと思っている」との考えを示し、「我々のビジネスモデルは非常にユニーク。重要なことは、自分の頭で戦略を立てることだ」(同)とここ最近目立った楽天のビジネスモデルへの批判に対して、反撃した。

 その上で、「最後に勝つネット企業の条件は2つしかない。1つは入口を押さえることで、もう1つは出口を押さえることだ」と、“入口”をポータル最大手のヤフーに見立て、“出口”をEC最大手の楽天であるとの考えを述べ、“打倒ヤフー”の方向性に変わりがないことを示唆した。

 具体的な今後リリース予定のサービスとして、近く、NTTドコモと組んで展開する携帯オークション、年内には楽天グループが保有する会員がグループすべてのサービスを1つのIDで簡単に利用できるサービスを開始すると宣言した。

 もう1つの楽天批判として多い「楽天はWeb 2.0企業ではない」との声を想定し、三木谷氏は逆に「我々(のEC事業を支えているブログの貢献度を考えると)は超CGM(消費者生成メディア)」と強調した。2万店近くと契約し、全国各地のさまざまな商品を日々発掘しながら販売している状態が、ネット時代の到来であまり売れない商品群が売れて大きく売り上げに貢献する「ロングテール現象」と変わらないと見ているためだ。そしてそれを支えているのが楽天が有するコミュニティで、利用者の書き込みは1700万件程度にも達するという。

 楽天の内外でも同社のWeb 2.0対応への評価は高く、「90年代後半から『これからはUGC(利用者生成コンテンツ)が来る』と強調していた」(元楽天社員)、「ブログのEC活用でまず参考にしたのは楽天」(ドリコム社長の内藤裕紀氏)との声もある。

 一方、TBSとの経営統合問題で棚上げになっている動画事業の展開については、「動画だけで儲けるのは難しい状況になりつつある」(三木谷氏)との考えを示した。TBSとの関係に変化があった可能性を示唆する発言だったため、講演後、記者団に囲まれた三木谷氏は同様の内容となる質問を受けたが、これに関しては「ノーコメント」を通した。

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