ここ最近は、携帯機器向け音楽サービスの分野で頂点に立つApple ComputerをMicrosoftが引きずりおろせるかどうか、という議論が盛り上がっている。だが、ある新興のモバイルソフトウェアメーカーが、両社を脅かす存在になろうと狙っている。
創立から3年目のインターネットラジオサービス企業、Mercoraは米国時間9月25日、スマートフォン向けに初のワイヤレスで利用できるモバイルメディアアプリケーション「M」を発表した。このソフトウェアを使えば、PCからワイヤレスで「Windows Mobile 5.0」搭載の携帯電話に音楽を送り、音質をほとんど損なうことなく再生できる。
Mercoraのプレジデント兼最高経営責任者(CEO)Srivats Sampath氏は、自社サービスでAppleやMicrosoftと互角に勝負できると確信していると述べた。
「Steve Jobs氏の『iPhone』には負けない。当社のソフトウェアは(iPhoneと)まったく同じ機能を提供する。さらに、Microsoftの『Zune』にも先んずることができた」と、Sampath氏は述べた。同氏がZuneをライバル視するのは、楽曲をワイヤレスで転送して共有する機能があるためだ。
かつてMcAfeeのCEOを務めたこともあるSampath氏の発言は、かなり威勢がいい。だがアナリストたちは、確かにMは機能面で大手2社の先を行っているかもしれないが、音楽ファンを動かしてお気に入りのMP3プレーヤーから乗り換えさせるのは、米国でのスマートフォンの普及率が約2%しかないというニッチ市場であることを考えると、現実的には難しいだろうと予想する。
Mの利用契約を結んだユーザーは、携帯電話を介して、各自のPC内のデジタル音楽ライブラリにどこからでもアクセスできるようになる。ただし、対応するファイル形式は、Windows Media Audio(WMA)、MP3、Ogg Vorbisに限られる。Mは、すべてのファイルをエンコードおよびデコードしてOgg Vorbis--CDに近い音質を実現する低ビットレートのフォーマット--に変換し、イヤホンに届ける。耳寄りな話に聞こえるが、Appleの「iTunes Music Store」から購入した楽曲の再生は諦めなければならない。Appleは独自のAACフォーマットを採用しており、MercoraのMはAACに対応していないからだ。しかし、CDからリッピングしてiTunesのライブラリに加えた曲であれば、問題なく再生できると、Mercoraの事業開発担当ディレクターAvikk Ghose氏は説明する。
曲のファイルを携帯電話機に入れるわけではないため、曲数の限界を決めるのはファイルを保存するコンピュータの容量だけだ。そのため、音楽ライブラリと機器を同期したり、機器ごとにライブラリを更新したりする必要がない。これに対し専用の携帯音楽プレーヤーは、コンピュータのハードディスクにダウンロードした曲を、プレーヤーと同期させる作業が必要だ。Mのユーザーはさらに、数千のジャンルとサブジャンルで検索可能な、10万局を超えるインターネットラジオ局にチャンネルを合わせることができる。
Envisioneering GroupのリサーチディレクターであるRichard Doherty氏によると、Mの無制限聴き放題の料金は月額で4.99ドル、年額なら49.99ドルであり、「非常に競争力がある」という。これは「Yahoo Music」の、ミュージックストアからPCへダウンロードする定額無制限モデルとほぼ同じ料金だ。
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