「ネットで活動するジャーナリストにも他の既存メディアの記者と同じ権利が認められるべきか」。この未解決の法的問題に対する答えが、米国時間20日にサンノゼのカリフォルニア地方裁判所で始まる裁判で出されることになるかもしれない。同裁判所はこの日、Apple Computerが起こした訴訟の審理を行う予定になっている。
Apple側は、オンラインジャーナリストにはそうした権利を与えるべきではないと主張している。同社の弁護士は裁判所に提出した書類のなかで、ウェブを活動の場とする人々は、同社が投入を計画している製品に関して機密にしておきたいと考える情報を明らかにしてしまうため、「報道の正当なメンバー」とは言えないと述べている。
この主張は、ブロガーや一般ジャーナリストの猛反発を招いた。しかし、サンタクララ郡高等裁判所のJames P. Kleinberg判事は、この主張に十分納得したようで、2005年3月にApple関連のニュースサイトにある電子記録の召喚手続きを認めた。
Kleinberg判事はその際、「万人にかかわる健康、安全、もしくは福祉の危険を明らかにする内部告発者や、公務員の不始末もしくは不正を明らかにする政府職員とは異なり、(Macintosh関連のニュースサイトは)情報に対する欲望を満たしているに過ぎない」と述べていた。
Appleから訴えられたニュースサイト「PowerPage.org」の代理人を務める電子フロンティア財団(EFF)では、控訴裁判所による召喚手続きの却下に期待している。この召喚状が出されれば、「Asteroid」(開発コード名)で呼ばれていたGarageBand用のFireWireオーディオインターフェースに関わる情報を流出させた人物が特定できてしまう。この召喚手続きは上訴審が終わるまで保留になっている。
EFFの顧問弁護士でこの裁判を担当するKurt Opsahl氏は19日、「カリフォルニア控訴裁判所には、これまで報道の自由を守ってきた長い歴史がある。今回も同裁判所が同じ立場を取り続けることを期待している」と語った。
Appleは、2004年後半に起こしたこの訴訟で、Mac関連のニュースサイトを直接訴える代わりに、姓名不詳の被告に狙いを絞っている。この召喚状は、PowerPageの電子メールプロバイダーであるNfox.comに送付されたが、Nfox.comでは裁判の結果召喚が認められれば、それに従うとしている。
一方、「AppleInsider」サイトもAsteroidに関する情報を公開したが、同サイトは独自の電子メールサービスを運用しており、召喚状が送られてきても憲法修正第一条を強く主張できる(Appleは、別の裁判では「Think Secret」というファンサイトを直接訴えている。同サイトの運営者が、Appleの内部情報を入手しようとして、同社の業務機密保持に関する権利を侵害したとAppleは主張している)
PowerPage.orgはJason O'Gradyが運営するサイトで、数日おきに記事が公開されているが、こうした記事の内容は、多くの報道機関が出しているものとあまり変わらないように思える。具体的には、Appleの特許をめぐる論争のレポートや、ソフトウェアのパフォーマンスを測ったベンチマークテストの結果、ソフトウェアのレビュー、正式には未発表だがこれから登場しそうな製品に関するニュースなどが掲載されているに過ぎない。
これから登場する製品についてのニュースを、だれよりも先に伝えることは、ジャーナリストの間では一般に大きな手柄と見なされている(ただし、その情報が正確なものであるという条件がつく)。たとえば、昨年AppleがPowerPCチップからIntelプロセッサへの切替を決めた際には、CNET News.comが真っ先にこれを報じた(さらにいえば、O'Gradyはしばらく前から、やはりCNETが運営するZDNet.comにブログを連載している)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力