[ニュース解説] 米国時間2月28日に、Googleの最高財務責任者(CFO)が「あとは有機的な成長くらいしか売上拡大の余地がなく、今後はトラフィックを増やし売上につながるビジネスを成長させることが必要になる」と発言したことを受け、同社の株価が一時急落した。
GoogleのCFO、George Reyesはこの日の午前中に、Merrill Lynchが主催した投資家向けのイベントで講演し、「われわれの成長率が四半期ごとに鈍化していることは明らかだ。われわれは今後ビジネスを売上につなげるための他の方法を見つけなくてはならない」と語った。Googleの株価はこの日、一時13%以上下落する場面もあったが、後場にやや値を戻した。
この発言の内容に対するわれわれの反応は「これはニュースなのだろうか」というものだ。以下に示すのは、最近CNET News.comや他の情報源で採り上げられたGoogle関連の話題で、Reyeのコメントにつらなる文脈を提示するものだ。株式市場の反応は確実に予測できるものではないが、これだけ多くの課題と今回のコメントが想定内のものだったことが分かる。
・初の利益予想未達--Googleは先月、第4四半期決算の結果を発表した。この決算では2004年8月の株式公開以来初めて利益が予想を下回ったことから、同社の株価は10%以上下落した。この件についてReyesは、税率が予想通りであればアナリストの予想を上回ることができたはずだと説明した。株式公開以来、同社の株価は400%以上上昇しており、1月中旬には過去最高となる1株475ドルを付けていた。
・ネット広告への依存--検索結果ページに表示する「AdWords」や、Googleがほかのサイトに表示させる広告、そして無料で提供する電子メールサービス「Gmail」に表示される広告まで、Googleはほぼすべての売上を広告収入に依存している。ただし、同社の背後にはYahooやMicrosoftが迫ってきている。
・中国のウェブ検閲をめぐる批判--Googleは、成長のために、広大でほとんど未開拓の中国市場に目を付けているが、同市場でのビジネスでさえ危なくなっている。同社は中国政府の検閲政策に協力したことから、YahooやMSNとともに米連邦議会から激しい批判を浴びている。また、このような活動を規制する法案も提出されている。
・検索情報提供をめぐる米政府との戦い--Googleの株価は1月にも下落していたが、これは同社が顧客データのプライバシーを巡って米国政府との負担の大きい法廷闘争に巻き込まれる可能性を投資家が懸念したためだ。Googleは、個人情報を除く検索データの提出を求める米司法省の要請に異議を申し立てている。この件は現在係争中だ。
・著作権問題--先週、米連邦裁判事が、ほかのウェブサイトにある写真のサムネールを表示するGoogleの画像検索サイトについて、その一部が米国の著作権法に違反する可能性が高いとの判断を下したことから、同社の強力な検索手法が法的な面で打撃を受けた。
・商標とクリック詐欺訴訟--Googleの中核事業であるキーワード検索広告ビジネスが、商標権侵害やクリック詐欺訴訟の標的にされている。CNG Financialは、GoogleがCNGの商標を含むキーワードの購入を競合各社に認めているとして同社を提訴している。Googleはまた、不正行為によるネット広告クリック分を課金されたとする広告主が起した複数の集団代表訴訟でも被告になっている。
・書籍デジタル化論争--Googleは、一部の出版社や著述者団体が著作権法に違反すると主張する「Book Search Library」スキャンプロジェクトを巡っても訴えられている。
・紙媒体や放送媒体の広告--Googleは、収益性の高い広告のビジネスモデルをデジタル媒体以外にも拡大しようとしている。同社は紙媒体への広告販売を試みているが、その結果はまちまちだ。Googleは、EarthLinkと協力してサンフランシスコ市に対してワイヤレスインターネット網の提案を行っているが、これも広告が関連してくる可能性が高い。Googleはさらに、ラジオ広告を販売するDMarc Broadcastingを先ごろ買収しており、この技術をAdWordsプラットフォームに統合し、Googleの広告主向けに新しいラジオ広告販売チャネルを用意する計画も進めている。
・加速する人材獲得--Googleは驚異的なペースで会社の規模を拡大させており、毎週50〜60人の社員を採用しているとReyesは述べたが、そのことから同社がその企業文化を維持できるのか、あるいは適切に成長を管理できるのか、といった疑問の声も上がっている。
・Blodgetの弱気--Piper Jaffrayは先ごろ、Googleの2006年の目標株価を600ドルまで引き上げた。しかし、元証券アナリストのHenry Blodgetは、ネット広告の成長鈍化からGoogleの株価は1株100ドルにまで下がる可能性があると推測している。同氏は「Internet Outsider」という自分のブログに、「いずれは、どのビジネスでも市場の飽和と価格圧力の両方が発生する。問題は、それがいつになるかだけだ」と書き込んでいる。
Googleの幹部らは財務関連の指標を公開しないとする同社の方針をあくまでも貫いているが、同社が3月2日に予定しているアナリスト向けの説明会で、追加情報を開示することをウォールストリートが切望していることは間違いない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」