米国時間3日にGoogleが数千冊の著作権切れ書籍をオンラインで公開したのを受け、Amazon.comはユーザーがウェブ上で書籍を読めるようにする計画を発表した。
また、世界最大の一般書籍の出版社であるRandom Houseも、同社の書籍をインターネット上で有料公開するビジネスモデルを明らかにした。
Amazonの新たなプログラム「Amazon Pages」では、1冊の書籍全体もしくは任意の部分を有料で読むことが可能になる。同社はさらに、ユーザーが追加料金を支払うことで、Amazonから購入した通常の書籍に電子的にアクセスできるようになる、「Amazon Upgrade」プログラムも発表した。
Amazonは、「例えば、料理本を買って棚に入れておくだけではなく、ウェブを利用してどこからでもアクセスできるようになる」と声明のなかで述べている。
このサービスの価格設定や提供開始の時期、著作権の取り扱いに関する点などは明らかになっていない。著作権をめぐっては、Googleの図書館所蔵書籍デジタル化計画に対して訴訟が起こされている。
一方、Random Houseは、各オンライン書店や検索エンジン、エンターテインメントポータルなどと個別に交渉して契約を結び、同社の書籍をユーザーが1ページごとに有料で読めるようにしていくと語った。これは同社にとってオンラインでの作品提供に向けた第1歩となる可能性がある。
Random Houseの発表によれば、同社は書籍に完全な索引を付加して検索/表示ができるようにするほか、最大で5%のページをサンプルとして無料提供するという。ただし、書籍をダウンロードしたり、印刷もしくは複製したりすることはできない。
各ベンダーは、当初提供されるフィクションおよびノンフィクション作品を無料サンプルの範囲を越えて扱う場合、1ページ当たり4セントをRandom Houseに支払うことになる。ベンダーはユーザーに課金する額を任意に設定できるが、Random Houseでは、20ページ当たり99セントという閲覧料金を価格モデルとして提示している。
同サービスでは、コンテンツの種類によって料金が変わってくるという。Random Houseは、「例えば料理本なら、1ページ25セントもしくは4ページ99セントで読むことができる場合もあり、またこれとは異なる方法でページをまとめる場合もあるだろう」と述べている。
料金の徴収は、顧客の少額決済をベンダーがとりまとめるか、決済代行制度もしくは代行サービス企業を利用して包括的に行うと、Random Houseは説明している。
「どこからでもインターネットを利用でき、また長い時間にわたる読書を可能とするディスプレイ技術が登場している現在、出版社にとっては、消費者にデジタル化されたコンテンツにアクセスするための革新的な選択肢を提供することが重要だとわれわれは考えている」とRandom House社長のRichard Sarnoffは述べている。
出版社はこれまでインターネットを使ったコンテンツの配信に及び腰だった。彼らは、著作権のある自社作品が勝手に流通するという、音楽業界の経験したような事態をおそれ、確実に作品を保護できる技術が登場し、そのための新たなビジネスモデルが確立されるまでは、ネット経由の配信を躊躇していた。
Amazonは2年前、「Search Inside the Book」という機能を公開し、デジタル化した書籍のオンライン提供で先鞭をつけた。このサービスでは、ユーザーがキーワードを使って書籍の内容を検索できるようになっている。そして、同サービスの公開以来、書籍の著作権を保護しながら同時に電子版を提供する方法について、関係者の間で議論が盛り上がってきていた。
昨年後半に、Googleが「Google Print Library Project」を立ち上げたことで、オンラインで閲覧可能な書籍の分量が爆発的に増加した。同社では、ハーバード、スタンフォード、ミシガン、オックスフォードの各大学図書館やニューヨーク公立図書館の持つ蔵書をデジタル化し、オンラインで検索可能にするとしていた。
この計画を知った米国の作家協会や出版社協会は、図書館の蔵書の文章を読み込んでデジタル配信する行為は著作権侵害にあたるとして、Googleを訴えた。Google側ではこの主張を認めず、同社の計画する作品の利用方法は著作権で定められた「フェアユース」にあたるとし、著作権の切れていない書籍の一部だけを表示することも、この条項で認められた行為に含まれるとしていた。
GoogleのライバルにあたるYahooでは現在、Internet Archiveと協力しながら「Google Print Library Project」と競合する書籍のデジタル化プロジェクトを進めており、先週にはMicrosoftのMSNも同プロジェクトへの参加を表明した。この取り組みでは、著作権が切れた作品や著作権保有者の許可を得られたものだけを検索可能とすることで、著作権をめぐる厄介な議論に巻き込まれることを回避している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」