米国以外のほぼすべての地域では、携帯電話が最も愛される携帯機器となっているが、米国の各携帯電話会社は長い間、Apple ComputerのiPodが最も愛される携帯端末になるのを指をくわえて見守ってきた。
だが、各社はいま、この状況の打開に乗り出そうとしている。
Verizon WirelessとSprint Wirelessをはじめとする各大手携帯電話事業者は、iTunesのような音楽配信サービスの開始準備を徐々に進めている。各社はいずれも、ユーザーに新しいブロードバンド無線ネットワーク経由でダウンロードした音楽ファイルを聴くよう説得したい考えだ。これらのサービスは、早ければ年内にも楽曲の販売を開始する予定で、デジタル音楽のさらなる普及にどん欲なレコードレーベルの熱い視線を集めている。
「われわれはこれらのサービスに大いに期待しているが、ただしそれほど楽観視しているわけではない」と、Universal Music MobileのゼネラルマネジャーRio Caraeffは言う。「今後6〜12カ月で試験サービスや選択肢が増え、市場が健全な状態になる。どのモデルが勝つのかは分からない」(Caraeff)
計画中の携帯電話を使った音楽配信サービスが、いずれはAppleにとって最大の脅威となる可能性がある。同社は、iTunesオンラインミュージックストアを2003年に起ち上げて以来、デジタル音楽ビジネスを支配してきている。
現在では、すべての主要携帯電話会社が、楽曲の保存と再生に対応した携帯電話を発表している。これらの端末は、主にMP3ファイルやMicrosoftのWindows Mediaフォーマットをサポートしたものだ。MotorolaのCEO、Ed Zanderも米国時間25日、携帯電話の新シリーズを発表した際、携帯電話機の成長で重要なカギを握る分野の1つとして、音楽にスポットライトを当てていた。
だが、それが成功するかどうかは、メディア配信ビジネスの経験があまりない携帯電話事業者が、初期に下すビジネス上の判断に大きく左右されることになるだろう。アナリストによると、携帯電話への音楽配信サービスをiTunesなどのサービスと比較した場合、少なくとも米国では曲単価が最大で2〜3倍になり、曲の品揃えも少なくなるという。
金額が割高になる理由の1つは、レコード会社や携帯電話事業者が、着メロに喜んで3ドル以上支払っているユーザーに一曲全部を提供した場合、彼らが99セント以上支払うはずだと考えていることにある。また携帯電話会社は、消費者はどこにいても瞬時に曲を購入できる利便性に対して余分に料金を払うと考えている。
IDCアナリストのSusan Kevorkianは、「携帯電話を使った音楽配信はまだ黎明期にある。われわれの予想では、消費者向けに直接音楽配信を行う携帯電話事業者は、利用者の衝動買い狙いで曲を提供していくと思う」と語っている。
それでも携帯電話事業者がこのような計画を進める背景には、大手各社と携帯電話経由の楽曲配信を支援する各レコード会社の思惑が一致しているという事情がある。
特に、いわゆる第3世代(3G)のブロードバンドネットワークへの移行を進める携帯電話事業者は、顧客に高価なデータプランを利用してもらうためのアプリケーションを探さなくてはならない。携帯電話を使った楽曲のダウンロードやストリーミング配信が人気を集めることは、欧州やアジアの市場ですでに実証済みで、韓国のSK Telecomは国内最大手のレコード会社に出資までしている。
レコード会社側でも、デジタル音楽の販売先を携帯電話ユーザーにまで拡大できることに大きな可能性を見いだしている。携帯電話の利用者は米国だけで1億7000万人以上とされ、iPodなどのMP3プレイヤーの購入者数を大きく上回っている。
また、副次的な効用として、 携帯電話市場が拡大することでデジタル音楽ビジネスにおけるAppleの独占的立場を弱めることができる可能性もある、と一部企業の幹部は付け加えている。現在は、Appleの力があまりにも強いため、レコード会社側が望む柔軟な価格設定や競合するサービス間での互換性の実現が妨げられている。
「Appleがダウンロード分野を独占していると言われており、そしてこれが音楽関連企業や競合各社にとって大きな問題となっている」と、匿名希望のある大手レーベルの幹部は言う。「この状態はどうすることもできない、などと言われているが、しかし携帯電話市場はこの勢力図を塗り替える大きなチャンスを提供すると思う」(同幹部)
現時点で不明なのは、Apple自体が携帯電話への音楽配信サービスを開始するかどうかだ。同社は1年前に、iTunes対応の携帯電話をMotorolaと共同で発表したが、この製品はまだ公開されていない。MotorolaのZanderは、同製品のリリースが予想されていた25日の報道陣向けのイベントで、開発がまだ終わっていないことを明らかにした。
「これは本当の話だし、まもなく登場するだろう。iTunesから目を離さないでほしい」(Zander)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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