電通は7月19日、HDDレコーダー(DVR:デジタルビデオレコーダー)がテレビの視聴動向に与える影響についてまとめたレポートを発表した。DVRの保有者はCM認知度が高いという結果を元に、DVRがTVCMの価値を引き下げるという他社の調査結果に反論している。
CM認知率に関する調査は2004年11月から毎月継続的に行い、関東地区に住む1260人に対して毎月40の事例について認知度を計測した。また、テレビの視聴動向についてはビデオリサーチと共同で2004年2月からウェブ調査およびグループインタビューを継続的に行っており、2005年3月には4621人に対してメディア接触状況についても調査した。
同社の調査によると、ほぼすべての事例において、DVR保有者のほうが、非保有者よりもCM認知度が高かったという。また、DVR保有者は広告に対する態度が平均よりも好意的で(表1)、新聞や雑誌、とくにテレビ情報誌への接触率が高いことも明らかになった。
他社の調査では、DVR保有者の過半数は番組再生時にCMを早送りするという結果が出ている(関連記事)。しかし電通では、CM認知度はDVR保有者のほうが高いこと、また情報感度が高く、広告全般に対して好意的であることから、「DVRユーザーこそCMメッセージを浸透させる上で効率的なターゲットグループといえる」とした。
表1.DVR世帯保有者と非保有者の広告に対する意識の違い(単位:%、出典:電通)
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野村総合研究所が5月に発表したレポートでは、DVRの普及によってTVCMがスキップされることから、約540億円の価値が失われたという試算が出されていた(関連記事)。しかし電通では、日本のテレビ広告の基準となる視聴率は、放送をリアルタイムに視聴する「ライブ視聴」のみを集計対象としており、録画機による録画や再生は視聴率に加算されないことを注意すべきと指摘している。
同社はDVRがテレビの視聴時間(民放のみ)に与える影響についても調査した。DVR保有世帯の場合、プライムタイム(19時〜23時)の視聴状況は非保有者よりもやや悪かった。しかし、非保有者の全日平均(6時〜24時)ライブ視聴時間を100%とした場合、平日で93.4%、土日は94.8%となり、この差はわずかであった(表2)。このため、電通では「この差異が現行テレビ広告ビジネスに与える影響はごく軽微と考えて差し支えない」としている。
世代別にDVR保有者の視聴動向を分析すると、35歳以上については、DVR保有者のほうがライブ視聴時間の長さは非利用者を上回った。しかし、12歳〜34歳については非保有者のほうがライブ視聴時間は長かった。このことから、若年層はDVRを使いこなして、自分の好きなときに番組を見る「タイムシフト視聴」を進めているのに対し、35歳以上の層はもともとテレビ好きな人たちが他者に先駆けてDVRを購入したのではないかと推測している。
また、過去7年間の家庭内メディア接触時間の推移を見ると、テレビの視聴時間が伸びていることが分かった。1998年から2004年にかけて、テレビ視聴時間は8.7分伸びて1日あたり208.3分となった(表3)。これは、PCでインターネットをしたり携帯電話でメールを送ったりしながらテレビを視聴する「ダブルスクリーン現象」が起きているため だと同社では分析している。
電通ではDVRの導入によってライブ視聴時間を含むテレビ視聴時間が増加する傾向があること、CM認知率はDVR保有者のほうが高いことから、「DVRはテレビへの接触機会を増加させる装置であるととらえるほうが適切である」と結論づけている。
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