このところ、シンクタンクがHDDレコーダーの利用調査を実施し、テレビCMへの影響などをレポートして話題を集めている。
こうした中、矢野経済研究所(YRI)は6月29日、HDDレコーダーによるテレビの視聴スタイルと広告に関する「2005 視聴スタイル動向調査」の結果を発表した。
この調査でYRIは、ユーザーと広告主を調査している。3月24日から4月5日の間に実施されたユーザー調査では、YRIのインターネットアンケート登録モニターの中からHDDレコーダー所有者708名を抽出し、テレビの視聴時間の変化やCMスキップの状況、視聴スタイルの変化などを調査した。その後5月9日から6月1日に行われた広告主調査では、有力テレビ広告出稿主6社を対象に、ユーザー調査の結果に対する考えや意見を直接面談にてヒアリングした。
ユーザー調査にて、HDDレコーダー所有者に対し、ビデオデッキ時代と比較して週あたりの視聴時間にどのような変化があったのか調査したところ、録画時間で76.3%、再生時間で71.0%「視聴時間が増加した」という結果が出た。また、リアルタイムでテレビを視聴する時間は、63.5%が「変わらない」とする一方で、23.1%が「減少した」と回答した。YRIでは、こうした結果を基に各時間を推計し、「週あたりで録画は3時間7分、再生は2時間29分増加し、リアルタイム視聴は20分減少した。リアルタイム視聴は微減したが、再生視聴が増加したため、テレビとの接触時間は合計2時間9分増加したことになる」としている。
CMスキップについては、「ほぼ毎回(90%以上)」CMをスキップするユーザーが45.5%で、「頻繁にする(70〜80%)」が23.6%、「半分程度(40〜60%)」が12.6%となった(図1)。このデータを基にYRIではCMスキップ率を69.2%と推計し、「CMスキップは日常的に行われている」とした。
こうした結果に対する広告主へのヒアリングでは、「リアルタイム視聴が微減であれば、テレビCM優位の方針に変更はない」という意見がほとんどで、CMスキップを大きく問題視する声は少なかったという。
ただし、ユーザー調査では、リアルタイムで視聴できるにもかかわらず、CMスキップや早見再生を使って効率的にテレビを視聴するために、あえてHDDレコーダーに録画するユーザーが増加傾向にあることも判明している。こうした視聴スタイルが「増加した」とするユーザーは45.6%にのぼり(図2)、YRIでは「リアルタイム視聴を直接減少させる視聴スタイルが増加すると、テレビ広告事業モデルという観点では将来問題となる可能性がある」としている。
HDDレコーダーとテレビCMの影響については、野村総合研究所(NRI)が5月31日に発表したレポートでも明らかになっている。NRIの調査では、テレビCMのスキップ率を64.3%とし、こうした数字などから「2005年のテレビCM市場では、金額にして約540億円の価値が失われることになる」と試算していた。
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