IT業界への影響はいかに
今回の裁判で、米最高裁の判事らは下級裁判所が下した2つの判決を再審理していた。どちらの判決でも、Groksterなどのファイル交換企業は自社のソフトウェアを利用するユーザーが著作権侵害行為を行った場合にも、その責任を問われないとされていた。最高裁は3月下旬に本件についての聴聞会を行っていた。
米最高裁は1984年に、ソニーのベータマックスをめぐる裁判で、ビデオデッキやその延長線上にある「実質的に非侵害目的で使用される」あらゆる技術の販売を合法とする判断を下していた。今回のPtoP訴訟では、このベータマックス判決が覆される可能性があったことから、IT企業各社はこの行方に高い関心を寄せていた。
IT企業各社は、PtoPネットワークの抑制を狙った著作権重視の新たな基準が出されると、新製品の阻止を狙った訴訟が増えるおそれがあるとして、これに反対していた。このベータマックス判決は、各種CD-RドライブからAppleのiPod、パーソナルコンピュータに至るまで多数の製品を保護してきた。
最高裁は27日の判決で、1984年の判決に細かい変更も説明も加えなかった。しかしSouter判事は、ベータマックス判決が顧客の著作権侵害を推奨あるいは助長する企業の保護を意図したものでないとし、さらにPtoP企業各社はこうしたカテゴリに分類されると思われる、と記している。
「いずれの会社(GroksterとStreamCast)にも、ユーザー が著作権で保護された素材をダウンロードしないようフィルターをかける、あるいは著作権で保護されたファイルを共有できなくするために、それを防止する努力をした形跡がない。どちらにも、既知の著作権侵害者--つまりオリジナルのNapsterユーザーが形成する市場の要望を満たすような狙いが見られる」(Souter判事)
このことは、ベータマックス判決による保護が、大半の場合に依然として適用されることを意味すると、複数の弁護士が述べている。しかしこの判決は、合法利用される製品は、その程度にかかわらず必然的に合法と見なす、という同判決の最も広範な解釈を無効にしてしまったと、Thelen Reid & Priestの弁護士Michael Elkinは説明している。
「ベータマックス判決が違法行為を認めたことは一度もなかったと思う」(Elkin)
この判決には、裁判所はPtoP企業が一線を越えたと思われる事例をいくつか指摘しただけで、そうした行為を助長したことを定義する明確な標準も基準も示さなかった、との批判の声も上がっている
IT業界の一部には、この判決が、新しい技術を擁する新興企業を相手取った訴訟の増加につながる可能性を懸念する見方もある。
「これは技術と革新にとって非常に危険な判決だ」と、 Computer and Communications Industry AssociationのCEO、Ed Blackは言う。「ベータマックス判決が楯か傘だとすれば、その傘には残念ながらいくつか穴が空いてしまったということになる」(Black)
さらに、Consumer Electronics AssociationのMichael Petricone(技術政策担当バイスプレジデント)は、「これは業界全体にとって深刻な問題だ。われわれはいま、中国やインドの企業との競争に直面しているが、彼らはこの判決によって米国の企業が強いられるような訴訟関連の負担を背負わずに済む」(Petricone)
しかし、IT業界のなかにもこの判決に対して否定的な見方をとらない人々もいる。Intelの広報担当者は、同社がこの判決について検討中であるとした上で、最高裁は今回ベータマックス判決の最も重要な部分を支持したように思えると述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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