米最高裁は16日(米国時間)、ある州の住民が他州のワインメーカーへ直接注文するのを州政府が禁じることはできないとする判決を下したが、これはEコマース業界にとって強力な追い風となった。
5対4という僅差で下されたこの判決の中で、最高裁はミシガン州とニューヨーク州が制定した保護法は他州のワインメーカーを差別するもので、憲法に反すると述べた。
(ミシガンとニューヨークの)両州は、税収の減少や未成年者への販売といった弊害が生じる可能性を主張しているが、だからといって(他州からの)直接販売を阻止する強硬手段を正当化することはできないと、Anthony Kennedy判事は述べた。「両州は、州外のワインメーカーによる脱税は極めてたぐいまれな脅威であるため、両州の差別的政策は正当化されると主張するが、その事実を立証していない」(Kennedy判事)
現在米国では、全体のおよそ半数の州がこの種の保護法を定めているが、16日の判決により、それらの州のワイン愛好家たちは今後、流通業者を介さず、ワインメーカーのウェブサイトに直接注文を入れられるようになるため、ワインの低価格化や選択肢の拡大といったメリットを享受できることになる。また今回の判決をきっかけに、ビールやアルコール度数の高い酒の販売についても同様の判決が下る可能性がある。
Institute for Justiceが提起したこの訴訟の原告の1人で、バージニア州ミドルバーグでワイン醸造業を営むJuanita Swedenburgは、この判決を高く評価した。同氏は、「この判決により、米国憲法制定者たちが心に描いたような各州間の市場の創設が可能になる」と述べ、さらに次のように続けた。「(米国憲法制定者たちは)商業に関しては50州が個別に行なうのではなく、1つの国家として統一されることを期待していた。今回の判決は、米国中から様々なワインを購入したいと考えているワイン愛好家にとっては願ってもない判決だ」(Swedenburg)
この最高裁判決が長期的により重大な影響をもたらすことは間違いない。各州は、自動車から棺桶やコンタクトレンズに至るまで、すべての商品の州外からの購入に厳格な規制をかける権限があると主張してきた。しかし、今回の最高裁判決の論理からすると、どうやら判事らは他の保護法についても反対の立場を取る可能性が高い。
それでも、今回の判決により、保護主義的政策を取る州が完全な自由競争に移行する可能性は低い。判事らが懸念しているのはあくまで州内のワイン醸造業者を優遇する差別的州法だけであるため、各州は例えば全てのアルコール類の対面販売を義務付け、自州のワインメーカーにも同じ厳格な規制を課す可能性がある。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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