[ニュース解説] Yahooは米国時間14日に、Musicmatchを1億6000万ドルで買収すると発表した。急成長中のデジタル音楽ビジネスの分野では後発となる同社だが、この買収で同市場の有力プレイヤーになる決意を明らかにしたといえる。
オンラインのラジオビジネスでは大手のYahooも、デジタル音楽販売/サブスクリプションビジネスでは、Apple Computerなどの他企業に遅れを取っていた。CNET News.comが最初に報じた通り、Yahooは、かつて取得した技術を基礎に社内で独自にビジネスを開発する、あるいは既存サービスを買収するといった、いくつかの選択肢を検討していた。
Yahooの事情に詳しい情報筋によると、同社は2月にMusicmatchとの交渉を開始したが、Musicmatchは14日に発表された買収価格の倍の金額を要求していたという。しかし、Yahooの幹部らは買収交渉が14日の発表前の数日間にすんなりとまとまったと述べている。
両社の買収合意はなされたものの、Launchcastなど、Yahooの他の音楽サービスとMusicmatchとの統合にはしばらく時間がかかる。しかし、Musicmatchの買収により、YahooはMicrosoft、Apple、ソニーなど、さらに強大化しつつあるライバル企業と競えるだけの確固たるプラットフォームを手に入れることになる。
Yahooの子会社であるLaunchを運営するDavid Goldbergは、「今後われわれはさまざまな製品/サービスを提供することになるだろう」と述べ、さらに「われわれは巨額の投資を行っており・・・デジタル音楽業界の主力企業になりたいと考えている」と語った。
今回のYahooによるMusicmatchの買収で、オンライン音楽業界の将来について最後まで残されていた疑問の1つが明らかにされるだろう。America OnlineからMicrosoftに至るまで、大手企業の大半は、向こう数年間の自社戦略をある程度明確に示してきた。それは、MusicNetのような卸売りサービスの開発、買収、利用である。
2003年に音楽配信サービス「iTunes」を立ち上げたAppleに続き、各社が慌ててデジタル音楽ビジネスに参入してきているが、これはブロードバンドインターネットの普及に加え、押し寄せるデジタル家電の波が、ついにデジタル音楽ビジネスに火をつけた、との認識が徐々に広がりつつあることを示している。
14日のYahooの発表により、同ビジネスへの参入を表明していない大手企業は、Eコマース大手のAmazon.comのみとなった。同社も自社サイト上で無料のデジタルダウンロードサービスを提供しているが、デジタル音楽の販売計画は発表していない。Amazon.comはこれまで、音楽に関する計画はたとえあったとしても発表しない、と繰り返し述べてきている。
Yahooがデジタル音楽ビジネスに参入するまでには、紆余曲折があった。
同社は2001年にわずか1200万ドルでLaunchを買収した。米市場調査会社Arbitronの最新の調査によると、LaunchのサービスはライバルのAmerica Onlineのサービスに次いで、世界第2位のインターネットラジオサービスに成長し、Yahooの幹部らもこの結果に大いに満足していた。
AppleがiTunesサービスを開始した直後にも、Yahooの幹部らはオンラインで1曲ずつ音楽を販売することに関して、その潜在収益力を疑問視していた。しかし、2004年初頭には、YahooのCEO(最高経営責任者)Terry Semelが、オンライン音楽販売ビジネスに参入することが必要になるだろうと公言していた。
Yahooの事情に詳しい情報筋によると、同社は昨年暮れ、音楽ジュークボックスやメディアプレイヤーを開発するため、密かにMediacodeと呼ばれる企業を買収したという。当時Mediacodeには、現在AOLが所有するメディア再生ソフト「Winamp」を最初に開発した数名の開発者が在籍していた。
Mediacodeの買収やそれに続くMusicmatchとの一連の買収交渉は、Yahooが新規ビジネス参入の際に用いる慎重な戦略を浮き彫りにするものだった。Yahooの幹部らは、自社の資産リストの拡大に関して、「買収か、開発か、提携」というモットーに長年執着してきた。同社は、求人情報サイトを運営するHotJobsを買収し、さらにOverture ServicesやInktomiを買収して検索ビジネスを強化する一方で、オンラインでの人材紹介サービスや比較ショッピングサービスなどは独自に開発した。
Yahooは14日に発表した買収に関して、当初は自社技術の開発に取り組んでいたものの、その後同業他社のMusicmatchを1億6000万ドルで買収するという、奇妙な行動を取った。
Goldbergは、Mediacodeのソフトをベースにした開発がまだ行われているのかという点についてはコメントを避けたが、Yahooは今年かあるいは来年に、音楽に関する別の計画を発表すると述べた。同氏によると、たとえ個別販売の利幅は薄くても、ダウンロードやサブスクリプションサービスの提供は重要だという。
「消費者のニーズに応えるため、われわれはたとえ利幅の薄い製品/サービスであっても提供していく」(Goldberg)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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