Bush米大統領は16日(米国時間)、米国初のスパム規制法、CAN-SPAM(Controlling the Assault of Non-Solicited Pornography and Marketing Act)法案に署名する見通しだ。これについて同法の支持者たちは、ポルノ、バイアグラ、やせ薬などの勧誘メールの撲滅に向けた大きな前進としている。
しかし一方で、新法が成立しても受信トレイに入ってくるジャンクメールの量が減る可能性は低い、と批判的な見方をする向きもある。同法は2004年1月1日から施行される。
今回の規制法では、各企業が既知、未知の顧客に対し、どのように連絡を取るべきかについて定めている。メールのヘッダー部分を偽造した場合や適切なラベリングを行わずに性的内容のメールを送った場合には懲役刑が課される可能性がある。米連邦取引委員会(FTC)には新たな法執行の権限が与えられ、同委員会では全米で広く認知されているDo-Not-Callリストに似たDo-Not-E-mailリストの作成に踏み切る可能性がある。
しかし一部のスパム反対派はCAN-SPAM法案に対して警鐘を鳴らす。同法の成立によって詐欺的でないスパムの送信が合法化され、さらに、場合によってはそのような行為も禁じる州法が無効となる可能性がある、というのがその理由だ。大量のメール送信を規制している州は全米で少なくとも34州に上り、なかには米政府よりもはるかに厳格な規制を敷いている州もある。ワシントン州ではメール受信者にスパム発信者を訴える権利を与えており、またカリフォルニア州とデラウェア州では、事前に取引関係のない相手に商用メールを勝手に送りつける行為を禁じる、いわゆるオプトイン規制を導入している。
カリフォルニア州やデラウェア州の法律と異なり、CAN-SPAM法ではオプトアウト方式が採用され、また個人がスパム発信者を訴えることも認められない。カリフォルニア州の州法を支持した民主党所属の同州議会議員、Debra Bowenは12月8日に発表した声明の中で、「(CAN-SPAM法では)スパムはなくならず、逆に議会のお墨付きを与えることになる・・・米国憲法修正第1条で保証されている広告主の言論の自由は、個人の放っておいてもらう権利に勝るものではない。スパムは合法的な宣伝活動とは言えず、言論の自由の対象外だ」と述べた。
CAN-SPAM法に対する批判は思わぬ所からも飛び出した。それはなんと、最も悪質なスパム発信者の告訴を担当することになる連邦や州の機関だ。
長年スパム対策に取り組んできたFTCのTim Muris委員長は今年の夏以来、CAN-SPAM法は益よりも害の方が大きい可能性があると警告してきた。Muris委員長は、同法は役立つどころか現在FTCが進めるスパム発信者を提訴する取り組みの障害になる可能性がある、と指摘した。(FTCは、成立していれば同委員会が各国政府と緊密に連携し、また米国のインターネットサービスプロバイダに対し、秘密裏に加入者についての情報を請求することが認められるはずだった、別の法案を支持していた)
Muris委員長は8月に行った講演の中で、「(CAN-SPAM法の下では)FTCは、(製品またはサービスの宣伝のためにスパム発信者を雇っている)販売業者が、その第三者の差出人に違法行為を行う意図があったことを知っていたか、あるいは意識的に知ろうとしなかったことを証明する必要がある。この規範では、販売業者とスパム発信者の両者がどの程度知っていたかを証明することが義務付けられる・・・現在の我々の裁判権の下では、(スパムの)差し止め命令を得る上で、このような当事者の意図の証明義務を果たす必要はないが、今後これらの義務が課されれば(FTCにとって)大きな障害となる」と語った。また11月に行われた非公開の会合の出席者によると、Muris委員長はある反スパム団体に対し、FTC は恐らくCAN-SPAM法の施行後もスパム発信者に対し現行法の適用を続けるだろう、と述べたという。
同じくCAN-SPAM法の執行を司ることになるNational Association of Attorneys General(NAAG)は、さらに露骨な批判を展開している。NAAGは今月議会に送付した書簡の中で次のように警告した。「同法案は、抜け穴、例外が多すぎる上、証拠の要求水準も高すぎる。それゆえ最小限の消費者保護にしかなっておらず、法執行を効果的に行う上で大きな負担となる。我々は議会に対し、同法案を可決しないよう謹んで要求する・・・」
一方CAN-SPAM法の擁護者たちは、批判者は過剰に反応しすぎていると指摘する。Ron Wyden上院議員(民主党、オレゴン州選出)の広報担当、Chris Fitzgeraldは、CAN-SPAM法の施行後も、詐欺やごまかしに対処するための一部の州法はそのままの形で維持される、と述べた。
また他の国会議員からは、たしかにCAN-SPAM法にも欠陥はあるかもしれないが、連邦法が全くないよりはましだ、という声も聞かれた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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