米RIAAがファイル交換訴訟で勝てる見込みは?

 カリフォルニア州サンマテオに住むCharles Dumondは、米国時間8日に自宅にかかってきた報道関係者からの電話で初めて、自分がレコード業界による一連の歴史的著作権侵害訴訟の対象になっていることを知った。

 「悪質」なファイル交換ソフト利用者を相手取りRIAA(全米レコード協会)が起こした前代未聞の訴訟で、261人の被告の1人に名指しされたDumontは怒りをあらわにし、その告訴に唖然とした、と語った。

 Dumondは同8日夜に行った短い電話インタビューのなかで、「自分自身はこのようなことをしたことがない。家族の誰かが、ファイル交換をしていたのかもしれない。ただし(ISPの)請求書は自分宛で来ている」と答えた。

 今回の訴訟の対象者が、自分の目で訴状を確認したり、弁護士に相談するよりはるか以前に記者たちから訴訟について知らされる中、Dumondのものと同じようなやりとりは、24時間以内に何百回となく繰り返されたことだろう。

 訴訟対象者の多くは、著作権関連でインターネットの一般ユーザー対象としては最大規模となる今回の告訴に関し、最終的にはRIAAと和解交渉を進めることになるだろう。しかし、詳細が明らかになり、被告の中にKaZaAマニアの子供を持つ保護者や、無意識のうちにファイル交換に利用されたコンピュータの所有者が混じっていることが分かれば、RIAAの起こした訴訟の中には当初の予想よりも複雑化するケースも出てくる。

 訴訟自体は単純なものだ。全米の裁判所に、ほぼ同じ内容の書式で提出されている今回の著作権侵害訴訟の訴状の内容は、被告がKaZaAなどのファイル交換サービスを通じて一般に提供したとされる作品が少数列挙されているだけで、複雑なものではない。RIAAプレジデントのCary Shermanが今回の訴訟を発表した電話会議の中で語ったところによると、特許を侵害しているとされるファイルについては、調査官がダウンロードして真偽を確認したという。

 それぞれの訴状には、デジタルミレニアム著作権法が認可した異例の召喚状手続きによりISPから提供された、容疑のかけられたファイル交換利用者の名前と住所が記されている。RIAAは、容疑のかけられたファイル交換利用者の個人情報を請求する召喚状を1500通以上発行したが、潜在的な多数の被告の中から261人しか選ばなかった理由は明かしていない。

 だが、これらの住所にはISPのアカウントが1つしか対応しておらず、その多くはアカウント保有者が自分だけで使っている可能性が高いが、Dumondなど一部のユーザーは、1つのアカウントを家族で共有している。ほかには、会社のコンピュータで利用したり、特定の時刻にだれがログインしたのかを記録せず、一般向けにサービスを提供する無線アクセスポイントから接続するユーザーなどがいる。

 カリフォルニア州立大学バークレー校の法学部教授、Mark Lemleyの予想では、Wi-Fiワイヤレスネットワークなどでインターネット回線を共有するような人物を提訴していた場合、RIAAはいくつかの問題に直面するだろうという。

 「コンピュータをWi-Fiネットワークに公開する行為は、明らかに直接的侵害行為ではないので、RIAAは実際にアップロードを行った人物を特定する必要が出てくる」(Lemley)

 一般に、ファイル交換利用者を相手取ったRIAAの訴訟は、ある程度勝訴の見込みがあると考えられている。この問題について考究したいづれの裁判所も、違法な著作権侵害行為がPtoPネットワーク上の各所で見られるとの結論に達している。だが法律の専門家は、それでもRIAAの大弁護団が失敗する可能性は各所に潜んでいる、と警告する。

 まず、著作権侵害の容疑をかけられている人々には、ファイル共有に関して、それが正当な「公正使用」にあたると答弁できる。ワシントンDCの弁護士で知的財産訴訟を専門にするMegan Grayによると、被告は「音楽理論の講義で特定の楽曲を分析したかったが、どこを探しても見つからなかった」といった主張が可能だという。

 さらにGrayによると、損害賠償責任を問われたファイル交換利用者にRIAAメンバー企業に対して倍賞金を支払うほどの資金力がどうしてもない可能性もあるという。さらに、ファイル交換利用者が未成年者であった場合、子どもの行為に対する両親の責任の有無は州によって異なるという。

 また、1992年のAudio Home Recording Act(AHRA)を利用すれば、容疑をかけられたファイル交換利用者は、今回の訴訟で弁護に成功できるかもしれない。AHRAが、PtoPユーザーに何らかの形で法的免除を与えられえる可能性があるからだ。何年も前に音楽業界から訴えられたNapsterは、AHRAをうまく行使できなかったが、裁判所は個人ユーザーに対してはもっと同情的になる可能性があるという考えが、一部の法律専門家の間にはある。

 同法には、「当該機器(デジタル録音機器)や、デジタル録音に使うメディアの、消費者による個人的使用」を根拠に著作権侵害訴訟を提起してはならないとある。CDやDVD作成機能を持つ最新のマルチメディアPCは、デジタル録音機器とみなされる可能性があり、そうなればAHRAが適用されることになる。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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