IBMが、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)技術からTT-RAM(spin torque transfer RAM)技術に関心を移している。
IBMは、ハードディスク用磁気記録コンポーネントを得意とするTDKと提携して、STT-RAMの開発を進めている。STT-RAMでは、微細な磁石に一定方向の電子スピンをもつ電流を流し、記録層の磁化の方向を変える。磁化の方向(上下、または左右)に応じて抵抗値が変わることから、抵抗値の大小に「1」または「0」を割り当ててデータを保存することができる。
現在の計画では、IBMとTDKは65ナノメートルプロセスの試作品を4年以内に開発することになっている。
シリコンバレーの新興企業、Grandisも、STT-RAMの製品化を目指している。Grandisは現在、既存の施設で潜在顧客向けのサンプルを製造中で、2008年後半には市場に出したい考えだ。
IBMは以前、STT-RAMよりも従来型のメモリに近い磁気メモリ、MRAMの開発に取り組んでいたが、チップ上のトランジスタの縮小に苦労していた。
「MRAMを小型化すると磁場を強めなければならず、また(データの)書き込みを続ける必要が生じ、実用的でなくなる。65ナノメートルから先へ進むには、情報を書き込むための新しいメカニズムを見つける必要がある」と、IBMの実験用不揮発性メモリ担当シニアマネージャー、Bill Gallagher氏は言う。
65ナノメートルプロセスは現在、プロセッサの生産に採用されているが、それ以外のチップはたいてい、90ナノメートルや場合によっては130ナノメートルといった旧来のプロセスで生産されている(90ナノメートル、65ナノメートルという数字はチップの回路線幅の平均値を表す。1ナノメートルは10億分の1メートル。回路線幅が細いほど動作が速く、エネルギー効率が高まることが多い)。IBMはMRAMの試作品を製造したが、その際は旧来の製造プロセスを使用した。
IBMはMRAMチップを製品化していない。Freescale SemiconductorはMRAMチップを製品化したが、最近になってMRAM技術の寿命について疑念を表明している。米国時間8月12日から14日まで開催された「フラッシュメモリサミット」で、FreescaleのDavid Bondurant氏は、MRAMは65ナノメートルを「超えられないかもしれない」と述べている。
STT-RAMと相変化メモリ(phase-change memory)の2つが、将来製品化される可能性のある有力な不揮発性メモリだ、とGallagher氏は言う。STT-RAMが高速なのに対して、相変化メモリは高密度だ。
STT-RAMは寿命の長さでも優位に立つ可能性がある、とGallagher氏は言う。相変化メモリでは、チップ上の微小なビットセルの温度が摂氏数百度まで上昇する。加熱することにより、結晶化した材料がアモルファス(非晶質)状態になる。表面が結晶状態かアモルファス状態かという違いに「1」と「0」を割り当てて、データを記録する仕組みだ。
IntelとSTMicroelectronicsは、相変化メモリで広範囲に協力してきた。メモリ業界に詳しい関係者の中には、2社の合弁会社であるNumonyxが近いうちに、相変化メモリの製品化計画を発表すると考える人もいる(相変化メモリは1970年代からメモリ技術として話題になってきたが、いまだ製品化されていない)。
主にサービス分野とサーバ分野で利益を上げているIBMが、なぜメモリに関心を示すのか?IBMはチップを生産し、知的所有権のライセンス供与も行っている。不揮発性メモリの開発は、自社で使用したり他社に提供したりするチップの生産にとって、欠かすことのできない要素なのだろう。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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