ついにPCゲームの開発者も、プロセッサメーカーの努力にただ乗りできる時代は終わりを告げつつあることを悟り始めたようだ。
従来、IntelとAdvanced Micro Devices(AMD)は先を争うようにプロセッサの高速化を推し進め、ゲーム開発者は長い間その恩恵にあずかってきた。開発者は一度プログラムを書いてしまえば、あとはIntelとAMDが競ってプロセッサのクロックスピードを上げてくれるので、それにつれてプログラムの実行速度も自然と早くなっていたわけだ。
しかし、高速化するプロセッサの熱問題に対処しきれなくなったIntelとAMDは、比較的低速のプロセッサコアを複数採用する設計に方針を転換した。これはつまり、シングルスレッド上で稼動することを想定して書かれたアプリケーションは、マルチコアのメリットにあずかれなくなる恐れがあることを意味する。そのため、ゲーム開発者はソフトウェアの開発方法について、根底からの見直しを迫られている。こうした状況を踏まえ、Intelは米国時間4月10日、開発者のマルチコア移行を支援する一連のソフトウェア開発ツールをリリースした。
大きなゲームの開発には数年を要する。つまり、デュアルコアプロセッサが市場に出回り始めた2005年ごろに発売されたゲームの大部分は、マルチコア環境を念頭に置いていないということだ。ただし、ゲーム開発会社はこれまでのところ、問題を回避する修正パッチをリリースして、ゲームをマルチコアに対応させている。
だが、これは全面的な解決策とは言えない。修正パッチのリリースは、ゲーム制作会社がマルチスレッドを当初から念頭に置いて開発したゲームを発売するまでの一時しのぎにすぎないからだ。マルチコア時代の到来を察知するゲーム制作会社の数は増えており、十数作の大型タイトルが、マルチコアプロセッサへの対応に向けて作業を進めている。しかし、新型プロセッサの力を利用するために、数十年にわたって蓄えてきたプログラミングのノウハウを捨て去るというのは、困難な作業だ。
Intelのゲームプラットフォームオフィスでディレクターを務めるRandy Stude氏は、マルチコア環境に対するゲーム業界の取り組みを次のように評価している。「今のところ、成績をつけるなら『Cプラス』というところだ。(2005年に)最初のデュアルコアプロセッサが登場したころは(落第ぎりぎりの)『Dマイナス』だった」
IntelとAMDは相当の時間と労力をかけて、ゲーム開発者に対し、ゲームを簡単にマルチコアに対応させる手法を利用するよう促してきた。AMDは2006年に、開発者の啓蒙を目的とするプログラムコンテストまで開催している。
その結果、ここ数年の間に「World of Warcraft」で知られるBlizzard Entertainment、および「Quake」と「Doom」の開発元であるid Softwareなどの大手制作会社が、自社のゲームをマルチコアに対応させる修正パッチをリリースしている。
しかし、Jon Peddie ResearchのアナリストTed Pollak氏は、こうした修正パッチは、最初からマルチプロセッサやマルチコアプロセッサを念頭に置いたゲーム設計と同列には扱えないと指摘する。
「同等のパフォーマンスは期待できない。それでも役には立つし、何もしないよりはましだ」(Pollak氏)
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