スイスのジュネーブに本部を置く標準化団体のECMA Internationalが、Microsoft Officeのファイルフォーマットを標準化するための委員会を設置した。これにより、Microsoftはデスクトップソフトウェアを巡って激しさを増す戦いのなかで1つの勝利を収めたことになる。
ECMAは米国時間9日、フランスのニースで開かれた総会において、XMLベースのMicrosoft Officeファイルフォーマットにもとづく正式な標準を策定するための技術委員会を設置した。
同委員会は、「上位互換性を維持」しつつこの標準の機能強化を進めるとともに、その仕様の管理も担当することになる。ECMAによると、この仕様の第1版は2006年末までには完成する予定だという。
この委員会設置の動きは予め想定されていたものだが、この問題をめぐってはこれまでにもさまざまな標準化団体や各国政府、さらにブロガーの間で戦いが繰り広げられてきていた。この戦いの結果次第では、Microsoftに数十億ドルもの利益をもたらしているオフィススイート製品の市場で、同社が現在のような独占状態を保てなくなる可能性もある。
一方、デスクトップアプリケーション分野でMicrosoftの独占状態に挑戦しているのが「OpenDocument」と呼ばれる標準だ。ただし、OpenDocumentを採用した製品はようやく市場に出回り始めたばかりで、その普及率もOfficeには遠く及ばない。しかし、IBMやSun Microsystems、Googleといった多くのライバル企業が、力を合わせてOpenDocumentの支援に回っている。
GartnerアナリストのMichael Silverは、「各社は10年以上にわたって製品を投入してきたが、Microsoft Officeとの競争にことごとく破れてきた。だが、今度はこのファイルフォーマットを糸口にして、Microsoftの牙城を切り崩そうとしている」と述べている。
OpenDocumentは、今年マサチューセッツ州でその使用を義務づける法案が通ったことで、一躍有名になった。同州の各行政機関で作成された書類の保管にOpenDocumentの使用を義務づけるこの法案は、現在見直しを受けている。
オフィススイート製品のファイルフォーマット標準をめぐるこの論戦はいまなお続いており、14日にはボストンで同州議会上院の公聴会が開かれる。これは、上院の経済発展/有望技術委員会と同州科学技術会議が開催するものだ。
マサチューセッツ州は数百万台のデスクトップコンピュータを利用しており、どのソフトウェアベンダーにとってもかなり大口の顧客といえるが、それよりもOpenDocumentの今後の行方のほうがより大きな重要性を帯びてきている。このファイルフォーマットをめぐる戦いはIT業界の今後を左右する重大事の様相を呈しており、同州にはロビイストの団体や既得権益を持つ業界幹部から大量の公開書簡が寄せられている。
サンのCEO(最高経営責任者)Scott McNealyは、今年に入ってマサチューセッツ州関係者に送った書簡のなかで次のように述べていた。「オフィス文書フォーマットのOpenDocument 1.0は、公開手続きによって標準化され、法的障害が一切なく、複数の製品ですでに実装されているほか、それをコントロールする特定のベンダーもおらず、ISO標準にもなろうとしている。その利用を義務づけることは賢明であり、マサチューセッツ州の住民に対して長期にわたるメリットを提供することだろう」(McNealy)
もう1つ、Microsoftで標準化作業を主導してきたAlan Yates(インフォメーションワーカー部門ゼネラルマネージャ)が出席予定であることも、事の重大さを示している。また、IBMのBob Sutor(標準担当のバイスプレジデント)や、Sunのフェローでありマサチューセッツ州にある同社の研究所でバイスプレジデントを務めるBob Sproullも出席を予定している。
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