サンフランシスコ発--コンピュータ業界の未来はカーボンナノチューブや他の新しい素材からチップをつくり出すことにあると考える人も多い。だが、Intel共同創業者のGordon Mooreが、シリコンチップに代わるものは簡単には見つからないとの予測を示した。
「私はこれらの新素材がシリコンに取って代わるとの考えに懐疑的である」。Mooreは米国時間9日に報道陣に対してそう語った。同氏はまた人工知能やIntelの将来、シリコンバレーの創成期などについても話をした。「われわれはこれまでに合わせて2000億ドル程度の金額を研究開発に投資してきた」(Moore)
Mooreは数年前に現役から退いているが、今後数カ月間は非常に注目を集める存在になるだろう。4月19日には、同氏がElectronics Magazineに寄稿した論文のなかでいわゆる「ムーアの法則」を発表してから40年になる。24カ月毎にチップに盛り込まれるトランジスタの数は倍増するというこの予想は、発表以来コンピュータ業界の基礎をなす原則となっており、より安く高速で強力なコンピュータや携帯電話を開発するための指針となってきた。
Mooreは1965年に発表されたこの記事について、「あれは、その時までに起こったことを振り返ってみる機会になった」と述べ、「あの予測が特に正確だとは考えていなかった」と語った。
同氏は最新の技術動向に関して細かいところまでは把握していないものの、新素材がシリコンに取って代わるとの考えに対する同氏の懐疑的な見方は現実に即したものだ。現在のマイクロプロセッサには数億個のトランジスタが含まれており、この数が10億個を超えるのも時間の問題である。その一方で、チップメーカーでは採算をとるために、こうした複雑なチップを何百万個も製造しなくてはならない、という事情を抱えている。しばらく前からナノチューブトランジスタの製造は可能になっているものの、大量生産の方法がいまだに示されていない、というのが現状だ。
それでも、シリコンを使ったチップを生産し続けることにはやはり問題もある。チップの設計者は、トランジスタのサイズを縮小することで、何十年にもわたってチップに搭載できるトランジスタの数を増やし続けることが可能だった。しかし、現在一部のトランジスタ部品は、すでに原子数個分のサイズになっており、これ以上の極小化は不可能なところにまで達している。
「原子でできた素材はどんなものにも根本的な限界がある」とMooreは述べ、この解決方法としてチップのサイズを大きくすることを提案し、さらにカーボンナノチューブも全く可能性がないわけではないと付け加えた。こうした素材は各トランジスタ間にある金属の接続部分の代わりに利用できるという。
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