Javaの生みの親として知られるJames Goslingが、Sun MicrosystemsとMicrosoftの技術提携に疑問を投げかけた。同氏によると、欧州連合(EU)がMicrosoftに要求している独占禁止関連の是正措置の影響で、両社の提携の意義が薄れてきているという。
Goslingは現地時間2日、豪シドニーで開催されたイベントに出席。ふだんはあまり人前に顔を出さない同氏だが、このイベントのなかで行われた開発者との質疑応答では自らの考えを正直に語った。
昨年、MicrosoftがSunに19億5000万ドルを支払い、独禁法違反および特許関連の訴訟を解決したというニュースが大きな注目を集めた。Goslingは、この和解を受けて始まった両社の技術提携に関して質問を受けると、「技術協力の意義を高めようと日々努力しているものの、ある部分ではその意味が失われつつある」と答えた。
Sunの開発者向け製品部門でCTO(最高技術責任者)を務め、同社のフェローでもあるGoslingは、「われわれとMicrosoftとの技術提携は、ますます意味をなさなくなってきている。これは欧州での独占禁止関連の是正措置による影響だ。EUはMicrosoftに対し、強制的に同社のインターフェースをだれにでも公開させようとしている。そのため、SunがMicrosoftと交わした契約の内容は、EUが彼らに強制していることと変わらなくなっているようだ」と述べた。
両社の契約では、「SunはMicrosoftのプロプライエタリ仕様を利用し、同社から情報を得て自社製品を開発することができる」となっているとGoslingは説明した。
しかし、同氏は情報の公開が認められていない点を指摘し、「Microsoftが、自社のプロプライエタリ情報について、それを公開する権利を放棄したわけではない。われわれは、たとえばファイルシステムはどのように動作しているのか、その秘められた仕掛けに関してMicrosoftから教えてもらうことはできても、それをオープンソースプロジェクトであるSambaに組み込み、動作させることはできない」と述べた。
「もしそんなことをしたら、今度はわれわれが秘密を教えなくてはならなくなり、彼らに撃ち殺されるはめになるだろう。いや、弁護士がやってくるかもしれない」とGoslingは冗談を口にした。
Goslingは、MicrosoftがOfficeのWordやExcelで使われているスキーマの仕様を公開し、Sunを含む開発者がリバースエンジニアリングを行わなくても互換製品を開発できるようにしたことについては、同社の英断だとこれを評価した。その一方で同氏は、米国の著作権法「Digital Millennium Copyright Act(DMCA)」が及ぼす脅威について注意を促し、DMCAには、Microsoftのような企業が他社によるリバースエンジニアリングを差し止めるのに乱用される可能性があると指摘した。
「これまでは、SambaやOpenOfficeのようなオープンソフトプロジェクトの場合、情報を手に入れるためにはリバースエンジニアリングをするしかなかった。そして、世界のほとんど全ての国々では、リバースエンジニアリングが完全な合法行為とされていた」(Gosling)
Goslingは、数年前に米国で成立したDMCAを「実に邪悪」なものだとした。
米国では現在リバースエンジニアリングは合法だが、ただしデジタル著作権管理(DRM)技術はその対象外とされている、と同氏は述べた。「このため、Microsoftのような連中があらゆるものにDRMを組み込んでいる。たとえば文書フォーマットなど、まったく意味があるとは思えないようなものにまでDRMが使われるようになった。こうした動きの背景には、実はリバースエンジニアリングを非合法化させたいという思惑がある」(Gosling)
「これはDVDの場合に起こったのとまったく同じものだ」と同氏は述べ、DVD分野で利用されている暗号化システムに言及。「あの暗号技術は世界中でもっともできのよくないプロトコールで、本当にバカげた代物だ」(Gosling)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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