ニューハンプシャー州ポーツマス発--経営の神様とも言われるClayton Christensenは、Microsoftがオープンソースから突きつけられている課題に対し、逆説的な答えを提案している。それは、ハンドヘルド端末用のLinuxアプリケーションに投資せよ、というものだ。
ハーバードビジネススクール教授のChristensenは1997年に、企業経営者が「破壊的な」技術を採用しないがために優良企業が転落していくことを説明した「イノベーションのジレンマ−技術革新が巨大企業を滅ぼすとき(原題:The Innovator's Dilemma: When New Technologies Cause Great Firms to Fail)」を著した人物だ。
Christensenはポーツマスで14日(米国時間)に開催された「Future Forward」テクノロジーカンファレンスでの講演で、Microsoftやソフトウェア業界全体にとって、オープンソースは明らかに破壊的な存在だと述べた。
「Linuxは、ウェブサーバやハンドヘルド端末用の新しいアプリケーションの世界で普及が進んでいる。こうしたアプリケーションは改善が進むにつれて、インターネットを席巻し、Microsoftを滅ぼす存在となっていく」(Christensen)
Microsoftはこのような市場崩壊に対し、「Microsoftを没落させる」ビジネスを別途立ち上げて対応すればよい、とChristensenは説く。ハンドヘルドコンピュータにおけるLinuxの台頭にMicrosoftが対応しなければ、同社は今後訪れる新アプリケーションや市場チャンスの波に乗れなくなるだろうと同氏は述べる。
Microsoftは、オープンソースソフトウェアが同社の事業に多大な課題を突きつけていることをすでに認めている。Christensenの見解に対する同社のコメントは、すぐには得られなかった。
Christensenによると、計画を立て顧客の意見に耳を傾けるという、確立された経営方法に従っている企業は、必ずつまずくという。企業が成功するためには、単に顧客の要望を満たすだけでなく、既存製品を常に改善していくべきだ、とChristensenは議論する。また企業は、低品質で利ざやの小さい製品であっても、新技術を利用するためのビジネスユニットを新たに立ち上げるべきだという。
同氏は、メインフレームよりシンプルで低価格のミニコンピュータを販売することで1980年代後半に急成長したDigital Equipmentを例に挙げた。同社は、他社のPCが売れ始めても、新市場の開拓には乗り出さなかった。PCは、大体の場合において利益率が低いうえ、ミニコンピュータほど技術的なニーズを満たさないというのがその理由だった。
ハンドヘルド端末上でLinuxアプリケーションが採用されるケースが増えれば、Windows OS用のアプリケーションを販売するMicrosoftの事業が脅かされることになる。
「コンピューティングの世界が、LANでなくインターネット中心のものになるにつれ、様々なものがLinux上で動くようになるだろう。Linuxの世界では全てが新しいから」と同氏は述べ、外出時にノートPCでなく、Research In MotionのBlackBerryをはじめとするハンドヘルド端末を持ち歩く人が増えていると指摘した。
またLinuxは、Microsoftの主力事業Windowsに代わる、安くて便利な選択肢でもある。Linuxはアプリケーションがシンプルで安いことから急速に普及した。同様のことがデータベース市場でも起きており、MySQLのようなオープンソース製品が出てきているとChristensenは述べた。
同氏は、Microsoftは今後6〜7年の間にLinuxアプリケーション事業への取り組みを開始し、少しずつ強化していくべきだと述べた。この分野は、OSやデータベースよりも成長の機会が見込めると同氏は考える。また同氏は、Windowsをハンドヘルド端末上で稼動させるための取り組みを廃止し、Research In Motionを買収するのはどうかとMicrosoftに提案した。
「BlackBerryの機能が高度化するにつれ、さまざまなアプリケーションが同端末に搭載されるようになるだろう。BlackBerryは今後発展する。これを捕まえることができれば、Microsoftは問題なくやっていけるだろう」
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」