Linux陣営の反応は概ね平静--SCO訴訟

Stephen Shankland(CNET News.com)2004年03月04日 19時05分

 SCO GroupがLinuxユーザー企業2社を提訴したことで、Linuxの世界では波紋が広がっている。だが、この影響もそれほど恐れるに足るものではないようだ。

 法律専門家らは、SCOがAutoZoneとDaimlerChryslerの提訴に踏み切った結果、多くのLinuxユーザーが落ち着きを失うと予想している。だが、ウィスコンシン州バラブーにある酪農共同組合、Foremost Farms USAのシステム管理者であるHoward Feiockには、そのような様子は見られない。

 「SCOの言い分が正しいとは思わない。今回の訴えが却下され、SCOがさっさと廃業するのを待つだけだ」とFeiockは述べた。同氏の職場では、Linuxを使ってウイルス対策の電子メール・スクリーニングを行っており、またOracleのビジネスソフトウェアをテストしているという。「我々の組織では、現在の環境で、Linuxの使用をやめることは考えていない」(Feiock)

 また、Linuxの生みの親であるLinus Torvaldsは、SCOがLinuxユーザーを訴えたことに対し、軽蔑の反応を示している。「(SCOによる)こうした動きはすべて、本当の問題--つまりビジネスがなく儲かっていないという同社の実態から、皆の注意をそらすための偽装にすぎない」と、同氏は電子メールによるインタビューのなかで述べている。

 SCOは今週、Linuxユーザーを標的にした攻撃を開始し、米国時間2日には自動車部品小売チェーンのAutoZoneを、そして翌3日には自動車メーカーのDaimlerChryslerを提訴した。SCOは、AutoZoneがLinuxを使用することで、SCOの保有するUnix著作権を侵害したと非難しているが、しかしDaimlerChryslerに対しては、同社がSCOと取り交わしたUnixのライセンス契約を遵守していないことを認めない点だけを非難している。

 LinuxはUnixと類似したOSで、多くの点で同じように動作する。しかし、オープンソースであるLinuxの場合には、GPL(General Public License)の条件の下で、誰もが中身の精査、変更、再配布を行えるのに対し、プロプライエタリなUnixの場合は秘密を守らなければならない。

 SCOの一連の行動にもかかわらず、低価格のIntelプロセッサ搭載サーバできちんと動作するLinuxは、ますます人気を集めている。ウェブサイトの動向をモニターしているNetCraftによると、SCOがAutoZoneに対する訴えを起こしたネバダ州の連邦地裁でさえ、ウェブサーバにLinuxを採用しているという。

 Linuxは確かに成長を続けているが、それでも一連の訴訟はこたえるはずだと、Sanford C. Bernsteinの金融アナリスト、Charles Di Bona Jr.は、米国時間3日に発表したレポートのなかで述べている。

 「LinuxのTCOを計算したこれまでの評価では、ほとんどの場合知的財産の保護に関する潜在的なコストが含まれていなかった。こうした導入時のコストがわずかずつでも積み重なれば、Linux採用の決め手の1つである、Windowsに対するコスト面での明らかな強みが、さらに弱まることは避けられない」と、Di Bonaは説明している。

 Linuxの熱狂的支持者は、これまでもSCOに圧力をかけ、LinuxがUnixの著作権を侵害しているとの主張を裏付ける詳細な証拠を明らかにさせようとした。今回のAutoZoneに対する訴訟で、SCOはこの要求に応えるという点で1歩前進した。同社はUnixで使われている数多くの詳細なプロセスを列挙したが、このOSのプロセスのなかには、スケジューラー、スレッド、ファイルシステム技術、I/Oに関するメソッドなどが含まれている。同社は、提出した訴状のなかで、Linuxもこうしたプロセスを利用していることから、SCOの著作権侵害にあたると主張している。

 この点について、Torvaldsはそれらの技術がUnixだけで使われているわけではないと述べた。「SCOが挙げたものは、あきらかにUnixやLinuxに固有のものとはいえない。カーネルスレッド、仮想ファイルシステムレイヤー等々、みんな冗談のつもりだろう。百歩譲って、彼らの主張でなるほどと思えるのは、誰かがUnixのSystem Vライブラリを使ったということくらいだ」と、Torvaldsは述べた。

 しかし、Linuxサーバベンダー、Penguin Computingの創業者兼会長であるSam OckmanのようなLinux支持者の間でも、いくらかの変化が見られる。「顧客からSCOの行動について聞かれた場合、今までは、それは主にSCOとIBMとの契約に関するものだと言っていればよかった。だが、今回の提訴で、問題はずっと広範なものになった。ただし、全体としてみれば、この件が原因でLinuxをもう使わないという人間が出てくるとは思わない」と、同氏はコメントした。

 一方、ポートランドにあるハイエンドの監視用カメラメーカー、iMoveで働く、Don Buchholzのように、全く動揺していないLinuxユーザーもいる。「Linuxに対するSCOの主張には、特に重要な点はない」と同氏は述べ、さらに「我々にまで影響が及ぶとは思えない」と付け加えた。SCOがこれまで訴えた相手は、すべて同社とライセンス契約を結んだ会社だったが、一方iMoveは一切契約を結んでいないというのが、同氏の考えだ。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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