L・トーバルズ:SCOの主張は「ゆすりも同然」

 オープンソース界を代表する人物が、LinuxユーザーはSCOにライセンス料を支払うべきというSCO Groupの主張を却下した。

 SCOの要求に異議を唱えたのは、Linus TorvaldsとEben Moglenの2名。Torvaldsは12年前にLinuxプロジェクトを立ち上げ、今でもLinux開発をリードする人物で、またMoglenは、Linuxの法的および技術的枠組をつくったFree Software Foundation (FSF)の弁護士だ。

  UNIXの著作権を有するSCOは、米Sun Microsystems、米Hewlett-Packard、米IBMなどにUNIXの使用許諾ライセンスを与えている。同社は、UNIXの知的財産に関連して、Linuxは次の3つの不正な行為を行っていると主張する。第一に、LinuxはUNIXのプロプリエタリなコードの一部を、そっくりそのままコピーして使っている。第二に、UNIX使用の許可を得ていたIBMが、ライセンス規定に違反して、UNIX用に開発されたソフトウェアをLinux用に移植した。第三に、LinuxにはUNIXの「コンセプトと手法」が使われている。これらの告発の一部は、IBMに30億ドルの賠償を求める訴訟の中でも展開されている。

 SCOは先週、Linuxを使用する企業にUNIXライセンスの購入を求め、さもなければ法的措置に訴える可能性があると伝えた。このSCOによる脅しが与える影響の大きさに関する、業界アナリストの見解はさまざまだが、しかしIBMはSCOの行動を非難した。

  Torvaldsは、これまでのSCOの行動に対しても否定的な態度をとり続けてきたが、SCOがUNIXに関する重要な著作権を取得したことに基づく今回の動きに対しても、SCOに対する見方をあまり変えていない。

 Torvaldsは、電子メールでのインタビューに答えて、「いまや、彼らのやっていることは、ゆすりも同然だ」と語った。さらに同氏は、SCOの主張に関する法的論拠のいくつかに対して異議を唱え、IBMが自ら著作権を有するコードを使って何をしようと、それはIBMの勝手であると論じた。

 Torvaldsは、これは「集合的著作権」の問題のひとつで、作業の結果生まれた集合体の、個々の部分に関する著作権と、全体に関する著作権とは別のものだと言う。

 「IBMがいくつかの部分のコードを書いたとすれば、その部分のコードについての著作権はIBMにある。だから、その同じIBMのコードがLinuxのなかに見られるのなら、たとえそれが一行違わずそっくりだったとしても、Linuxのなかにある以上、SCOにはそのコードについて何の権利もない。SCOが集合的著作権を保有しているのはUNIXで、Linuxのなかのある特定のコードではないからだ」と、Torvaldsは述べた。

 米国著作権法の集合的著作権規定は、一般的に、百科事典や雑誌などの著作権管理に関して適用される。(Carr & Ferrellの知的財産専門の弁護士John Ferrell)

 これに対してSCO側は、SCOとIBMの契約では、元のUNIXソースコードには含まれない、独自につくった「派生物(derivative works)」を公開することを禁じていると主張。「派生物に関する条項には、派生コードを秘密にしておかなくてはならないと書かれている。だからIBMは、この派生コードをまるごとLinuxのなかに加えることはできない。それをやったら契約違反だ。SCOには、その(移植された)派生コードをコントロールする権利がある」と、SCO広報担当のBlake Stowellは述べた。

 いっぽう、FSFのMoglenは、Open Source Development Lab (OSDL)のメンバーに向けた最近の講演の中で、さらに入念なSCO批判を展開している。OSDLはTorvaldsが働いている研究所で、Linuxのハイエンド向けの仕様を改善する作業に取り組んでいる。OSDLは、SCOの要求に異論を唱える内容のMoglenのポジションペーパーを公開した。

 このなかでMoglenは、いくつかの論点をあげているが、とりわけ、以前から展開してきた、ある議論を繰り返している。それは、過去にLinux製品のディストリビューションを行っていたことのあるSCOが、その活動を通じて、結果的に顧客にLinuxのソフトウェアに対する使用権を認めた、というものだ。

  「複製、修正、再配布を認めるライセンスとともに、著作権で保護されたLinuxをSCOから受け取ったユーザーに対して、勝手に複製も修正も再配布もしてはいけないと言うことは、 SCOにはできない」と、Moglenはポジションペーパーのなかで述べている。「SCOからライセンス付きの製品を受取った人々が、既存のライセンスとは異なる条件にしたいとSCOが望んでいるというだけの理由で、別のライセンスを結ぶよう求められることはない。どのような理論を用いても、それはあり得ない。」(Moglen)

 Moglenはまた、どのような場合でもLinuxの利用に著作権は関係ないと主張する。「新聞を読んだり、録音済みの音楽を聴くときに、著作権に対するライセンスは不要だ」。SCOの行為は、出版社が、盗作をした作家や著作権侵害を犯している本を配布している出版社を訴えずに、その本を読んだ読者を訴えるのに似ていると、Moglenは言う。

 しかしSCOは、自らの主張を固持する構えだ。「UNIX System Vからそっくりそのままコピーされた部分がLinuxのなかにあるのだから、それを顧客が使用するのは著作権の侵害にあたる」とStowellは述べた。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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