米IBM、Power5プロセッサに省エネ機能を導入へ

 米IBMは14日(米国時間)、2004年に発売予定の新型プロセッサPower5に消費電力を削減する新機能を導入すると発表した。

 IBMのPower5担当主任研究員、Balaram Sinharoyによると、Dynamic Power Managementと呼ばれるこの新技術により、現在のPower4+プロセッサと同じ消費電力で実行可能な命令数が5割も増え、しかもプロセッサの性能には全く影響は出ないという。Sinharoyはカリフォルニア州サンノゼで開催中のMicroprocessor Forumで行われた会議の中でこれを発表し、パワーマネジメント機能は、プロセッサのフル稼働時と待機時のどちらの場合も作動すると語った。

 電力消費はプロセッサの廃熱に直接関係するため、プロセッサやコンピュータを設計する上での大きな制約の1つとなっている。プロセッサが稼働時に発する熱量が多すぎるとエラーやクラッシュの原因となる。また、コンピュータやコンピュータ装置で一杯のデータセンター用の冷却システムは、設計するハードウェアメーカーにとっても、また稼働させる顧客にとっても、高いコストがかかる。

 Sinharoyによると、2004年にPower5プロセッサを搭載したサーバが発売され、さらに2005年には同プロセッサの後継モデル、Power5+が発売予定という。IBMはPower5プロセッサを64基搭載したハイエンドUnixサーバSquadronの発売を計画している。

 Power5は、Power4プロセッサと同様、1枚のシリコン上に2つのプロセッサコアを搭載する。IBMはこの"デュアルコア"設計の草分け的存在だったが、ライバルの米Sun Microsystemsや米Intelが追い上げを見せている。Power4と異なり、各Power5プロセッサは「スレッド(threads)」と呼ばれる2つのタスクを同時に実行できる。

 Sinharoyによると、マルチスレッドとデュアルコアの両技術を組み合わせることにより、Power5プロセッサを上限一杯の32基搭載したSquadronサーバは128ウェイサーバ並のソフトウェア処理能力を持つという。これに対し、デュアルコアのPower4プロセッサを16基搭載した、現在発売中のハイエンドUNIXサーバp690(開発コード名:Regatta)は32ウェイサーバ並の機能性しかない。

 Power5プロセッサは、同時マルチスレッド機能を停止して、2つのスレッドのうちの1つを最大速度で実行することができる。それ以外の場合は、1つのスレッドが全てのリソースを独占しないよう、 各スレッドの重要度を監視する。さらに待機中の省エネモードでは、両スレッドの重要度を可能な限り下げることにより、消費電力を最低限に抑えることができる。

 IBMによると、Power5のダイサイズは389平方ミリメートルで、2億7600万個のトランジスタを搭載しているという。1個のマルチチップ・モジュール(MCM)にPower5プロセッサ4基を1つのパッケージとして搭載する。このMCMは、チップ同士を結ぶ数千本の内部ワイヤーが張り巡らされたセラミックと金属で出来た正方形の基盤だ。

 もう1つのPower4との相違は、Power5の場合、シリコンにメモリコントローラが組み込まれるため、メモリとの通信を管理するための別個のチップが必要ない点。この方法により、メモリアクセスの速度が上がり、システムの信頼性が向上する、とSinharoyは指摘する。Sunはすでに現在のUltraSparc IIIプロセッサでこの方法を導入しており、Advanced Micro Devices(AMD)もOpteronプロセッサに採用している。

 Power4 とPower5の唯一の共通点は、いわゆる"パイプライン"と呼ばれるものだ。これは、チップが入力データを結果に変換する際に行う一連の処理工程を指す。Power5では、マルチスレッド技術に適応させるため、各機能がPower4から一新されているが、唯一パイプラインだけは同じ仕組みが採用されている。

 またPower5には、ハイテク業界で言ういわゆる"RAS(Reliability:信頼性、Availability:可用性、Serviceability:有用性)"を向上させるための新機能が導入される。具体的には、Power5はコンピュータの"ファームウェア"のアップグレード中も稼働し続けることができる。ファームウェアとはプログラムの1種で、オペレーティングシステム(OS)と似ているが、OSよりも深いレベルで機能する。

 さらにPower5は、エラー修正コード(ECC)でチップ内のより多くのデータ経路を保護し、またデータ送信エラーの一部を自動的に修正するよう設計されている。

 IBMは同日、2006年に発売予定のPower6について、いくつかの情報を提示した。Power6に搭載されるプロセッサコアの具体的な数は示さなかったものの、「超高周波数」と言葉で表現した。さらに同社は、Power6を65ナノメートルプロセスで製造すると発表した。(1ナノメートル=10億分の1メートル;プロセッサをより微細な新しい製造プロセスで製造するほど、プロセッサ上により多くの回路を構築できる)

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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