米Microsoftは来年、企業顧客獲得のため、同社の複数のシステム管理ソフトウェア製品を整理統合、またWebサービス用の初めての管理ツールも発売する予定だ。
Microsoftには、さまざまなシステム管理ソフトウェアがあり、いまなお種類が増え続けているが、同社ではこれらのバラバラな製品を統合し、その過程で「Dynamic Systems Initiative」と呼ばれる管理ソフトウェアに関する長期的な戦略から生まれた最初の製品を発売する予定だ。MicrosoftのEnterprise Management部門ディレクター、David Hamiltonが今週明らかにした。この戦略の目的は、自主管理可能でコスト効率の良い、企業データセンター向けの製品を作ることだ、とMicrosoftは話している。
この計画から、Microsoftがシステム管理ソフトウェアにますます力を入れていることが伺える。アナリストらによると、Microsoftは今まで、システム管理ソフトウェア部門が比較的弱かったという。同社は、米IBMや米Hewlett-Packard(HP)、米Computer Associatesなどのシステム管理ソフト大手と張り合おうと計画しているわけではない。しかし最重要システムをWindowsベースにするよう企業顧客を説得するMicrosoftの戦略において、管理ソフトウェアは重要な要素となっているのだ。
「企業顧客を得たければ、管理機能を提供しなければならないのは明らかだ」と調査会社Enterprise Management Associatesのプレジデント、Rick Strumは言う。「現在までのところ、システム管理ソフトウェア部門はMicrosoftの大きな収入源にはなっていない。しかし同社は、本格的に資金とリソースを管理(ソフトウェアの開発)に投資している」(Strum)
大企業では、ネットワークの監視やデスクトップパソコンの在処の追跡、セキュリティポリシーの徹底といった管理タスクの自動化に、システム管理ソフトウェアが利用されている。Microsoftが開発する管理ツールはWindowsシステムに焦点を絞り、Windows以外のマシンの管理についてはサードパーティの力を借りている。
Microsoft幹部が6日(米国時間)述べたところによると、同社は計画の手始めとして、10月22日にSystem Management Server(SMS)2003をコンピュータメーカー向けにリリースする予定だ。したがって、数週間中にも同製品が一般向けに発売される見込みとなる。また、Microsoft Operations Manager(MOM)2004と呼ばれる別の主要管理ソフトについても、そのベータ版を今年中に公開する予定だ。
SMS 2003は、企業が数千台のデスクトップパソコンを管理できる、よりスケーラブルな設計となっている。またMicrosoftは、企業がPocket PC端末の監視をやりやすくするためのアドオンを、半年以内にリリースする予定だとHamiltonは述べている。
.Netを監視する
Webサービスに関しては、Webサービスアプリケーションの状態を監視し、ネットワーク障害を回避できるようにする「管理パック」がMOMに含まれる。MOMは、Microsoftの.Netソフトウェアのコンポーネントを監視する製品で、来年半ばに発売予定だとHamiltonは言う。
Microsoftの2つのシステム管理製品--SMSとMOM--は、提供する機能が異なっている。SMSは、大企業が企業ネットワークを介して、パソコンにソフトウェアのアップデートやパッチを自動配信するための機能を備えている。一方MOMは、ネットワークイベントを監視して、サーバの過剰負荷やネットワーク接続の切断といった問題の発生を防止することを目的としている。
MicrosoftはSMSとMOMをまとめてSystems Centerという1つの製品にし、来夏発売する予定だ。最初のバンドルには、SMS 2003とMOM 2004が含まれる。
システム管理者に単一のツールを提供することにより、ネットワークの運営状況についてより正確なデータが得られ、管理コストも削減できる、とMicrosoft幹部は話している。来年半ばに発売予定のSystems Centerの最初のバージョンでは、インストール作業の共通プロセスや、ネットワーク状態のレポート機能などが基本的に統合される。Microsoftは2006年までに整理統合作業を完了させ、単一のシステム管理製品をリリースする見込みだ。
次のステップはDSI
またMicrosoftは、来年にDynamic Systems Initiative(DSI)で大きなステップを踏み出す。同社幹部は、あまりに多額のIT予算が、戦略的な計画の作成ではなく、ソフトウェアパッチの適用やネットワークの状態の監視といった比較的ありふれたタスクに費やされ過ぎている、と主張している。
MicrosoftはDSIにより、データセンター運営作業の多くを自動化し、関連する仕事を削減しようとしている。これはシステム管理ソフトウェアに、あるアプリケーションに問題が生じそうなことを把握させ、問題回避のために行動させようというアイディアに基づいている。たとえば、トラフィックが急増して既存のマシンの負荷が過剰になると、システム管理ソフトウェアが別のウェブサーバを立ち上げる、といったことも可能になるだろう。
DSIの考え方には、現在Sun、IBM、HPやその他の企業が進めているユーティリティコンピューティングと似たところがある。こうした取り組みは、サーバの処理能力をまとめてプールし、計算処理能力に対する需要の変化に基づいてこのリソースを提供する、といったことが可能な製品の開発に焦点を絞っている。しかしマイクロソフトは、開発者間での人気の高さや、自社のプログラミングツールの力を借りて、まったく違ったやり方をしている。
DSIの核となるのは、XML(Extensible Markup Language)ベースのデータフォーマットあるいはスキーマである、System Definition Model (SDM)だ。Microsoftでは、SDMを青写真に喩えているが、これはSDMが、ソフトおよびハードウェアのコンポーネントの制御のしかたを記述したものだからだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス