シャープのメディアタブレット「GALAPAGOS(ガラパゴス)」の予約が、12月3日に開始された。
東京都千代田区のヨドバシカメラマルチメディアAkibaおよびビックカメラ有楽町本館では、開店前から予約開始にあわせたイベントを開催。シャープのオンリーワン商品・デザイン本部長兼ブランド戦略推進本部長の岡田圭子氏をはじめとする同社関係者も訪れ、予約開始に弾みをつけた。
岡田氏は、「GALAPAGOSには3つの特徴がある。ひとつは、新聞、雑誌の定期購読ができること。2つめは縦書き、横書き、ルビ打ちといった日本語特有の表示機能に優れていること。そして3つめは、コンテンツの配信が次々と拡大し、テバイスそのものが進化すること。現在は電子書籍のコンテンツが中心となっているが、2011年春には、映像、ゲーム、音楽にも配信を拡大していく」とした。GALAPAGOSタブレットの価格は、5.5型のモバイルモデルが3万9800円、10.8型のホームモデルが5万4800円となっている。
関連:シャープ、「GALAPAGOSをやめるわけではない」(2011年9月15日)
今回のGALAPAGOSタブレットで注目を集めているのが、シャープが直販という手法を採用したことだ。全国の主要量販店には、商品は展示されるものの、その場で商品が手渡されることはない。量販店店頭で配布される申し込み用紙に必要事項を記入。支払い方法としてクレジットカードか代金引換払いを指定して、シャープに郵送する。クレジット契約が成立した時点で受注となり、シャープ側から商品が配送されることになる。商品が届いたら、初回起動時に無線LAN接続により、電子ブックストアサービスにアクセスして、本体と一緒に送られてきたユーザーIDと、パスワードを入力し、端末を登録する。ストア画面からコンテンツを初回購入する際にも、クレジットカードによるコンテンツの支払い登録を行う。
GALAPAGOSは、郵送による購入のほか、直販サイトの「シャープメディアタブレットストア」でも購入できる。サイトでの申し込みも受注確認後、シャープ側から商品が配送される仕組みだ。近いうちに、一部の主要量販店では、GALAPAGOSの展示スペースの横にインターネット端末を設置し、そこから直接申し込める仕組みも構築されることになりそうだ。その際も、商品はもちろん、後日シャープから送られることになる。
一見、消費者にとっても、販売店にとっても手間が増えるだけのように見える「直販のみ」という方式を、なぜシャープは採用したのだろうか。
最大の理由は、シャープがサービス事業へ進出するにあたり、端末の販売はユーザーとの関係を密にできる直販が最適と判断したからだ。直販の仕組みによって、シャープはGALAPAGOSタブレットの購入者を完全に把握でき、それらのユーザーに対して密接なコミュニケーションを取ることができるわけだ。
「GALAPAGOSは端末単体の事業ではなく、サービス事業」(シャープ社長の片山幹雄氏)とする同社にとって、携帯電話キャリアと同等水準の関係を築きたかったともいえる。だが、携帯電話キャリアと同様に、量販店店頭でこれだけの契約を結ぶとなると専用窓口の設置が必要になる。シャープがGALAPAGOSのためだけに、数多くの量販店に対して窓口を設置するという投資は不可能であるし、量販店側も販売台数が未知数のGALAPAGOSに専用窓口のスペースを確保するわけにはいかないのが実態だ。その結果が、直販という仕組みにつながることになった。
しかし、直販のGALAPAGOSに、なぜ量販店は積極的な展示を行うのか。それは、量販店にとって2つのメリットがあるからだ。
ひとつは、量販店に取次手数料が入るという点だ。申し込み書に記載された店舗名から、販売台数に合わせて一定の金額が量販店に支払われる。しかも、これが「iPadよりも儲かる」というレベルの利益につながるという。
もうひとつは、アプリケーションランチャーの最下部に、取り次いだ店舗のアイコンが表示されるため、そこから店舗のお得情報などを配信し、顧客の再来店を促すなどの販促効果が見込めるという点だ。
だが、一部の店舗からはこんな声も聞かれる。
「売った気がしない商品」
受注情報が量販店にもたらされるのは、購入者が郵送した書類がシャープに届き、受注処理が完了してからとなるため、数日間のタイムラグがある。その場で売り上げにカウントされないため、これでは量販店が「売った気がしない」のも分かる。さらに、メーカー直販は、店頭での衝動買いがないという点でユーザーの「買う気」がそがれやすい。そして、量販店の店員にとっても「売る気」がそがれやすいものともいえる。
GALAPAGOSをサービス事業としてとらえ、ユーザーとの関係を密にするという狙いで踏み切った「直販」という仕組みだが、GALAPAGOSタブレットの普及戦略という観点では、市場にどう評価されるのだろうか。
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