今週の注目の大半はAppleの新製品「iPhone 4S」とその売れ行きに集まるだろうが、同社の発表の中で最も重要なものは、米国時間10月12日にリリースされた「iOS」ソフトウェアの新バージョンだ。
6月に開催されたAppleのWorldwide Developers Conference(WWDC)で発表された「iOS 5」は、同社のモバイルソフトウェアにとって転機となるものだ。確かにiOS 5の大部分は調整や改良、そしてお約束の些細な処置が占めているが、iOS 5では初めて、iOSデバイスをAppleの「iTunes」ソフトウェアがインストールされたコンピュータから独立させ、さらに各種デバイスを同じファミリーに一元化しようと試みている。
このビジョンはAppleの「iPhone」がスタートしたところからは遠く離れた場所にあり、iOSが人気の面で同社のコンピュータを追い抜いて久しく、「iPad」のようなデバイスが直接競合するまでに成長したことを受けてのものだ。だが、ここで「『Mac OS X』が終わりを迎える」と論じるつもりはない。ただ、今は、単なるソフトウェアアップデートの1つとしか見えないような本件が壮大な計画の中でより大きな意味合いを持つことを示す絶好の機会といえる。
初代iPhoneで初めて搭載されたiOSはこれまで4つのメジャーバージョンがリリースされているが、ユーザーが音楽の同期やデータのやり取り、ソフトウェアのアップデートを行うには、「Mac」であろうとPCであろうと、コンピュータに接続している必要があった。だが今は、これらの機能はiOS自体に内蔵されている。
もちろん、コンピュータがあれば、自分のデバイスを接続し、これまで同様にiTunesを利用できる。だが、Appleの狙いは、デバイスを独立させ、箱から出してそのまま使えるようにすることだ。さらに、10月11日にリリースされた「iTunes 10.5」ソフトウェアアップデートとiOS 5ではワイヤレス同期機能が新たに加わり、そのねらいを支えている。この機能では、ユーザーは今まで通り、ただしケーブルなしでiOSデバイスと自分のコンピュータとを同期させることが可能となっている。
Appleは、自らが「PCフリーの時代」と称する世界を実現するために、各内蔵アプリケーションを精査し、iTunesがインストールされたコンピュータがなくとも問題なく動作するようにした。同社は過去のシステムソフトウェアアップデートでその下準備をしており、ユーザーはiTunes Storeのコンテンツをデバイスに直接ダウンロードできるようになった。だが、これは多くの部分においてユーザーにさらなるコンテンツ購入を促す1つの策略であった。今回のアップデートでは、システム全体に及ぶ分離的なアプローチを取り、ハードウェア単体で使用したいユーザーに、より強くアピールするものになっている。つまり、ユーザーはコンピュータから同期させているメディアを削除したり、デバイスで撮影した写真を編集したりできるようになる。
iTunesからの切り離しという、ある意味での犠牲を払うため、Appleは別のものを用意した。それが「iCloud」だ。これはAppleによる新たなクラウドベースサービスで、ファイルの保管とiOSデバイス間のファイルのやり取りの両方が可能となる。
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