Appleの共同創業者であるSteve Jobs氏が8月に最高経営責任者(CEO)を辞任したとき、当面の疑問は「Appleはこれからどうなるのか」ということだった。Jobs氏が米国時間10月5日に死去したことで、同社はいまやそのシナリオに直面している。
外部の人間からすると、短期的な面は明確であるように思える。Appleは、8月にJobs氏の希望によって実行に移された後継者育成計画があり、それに基づきTim Cook氏がCEOに就任したとしている。さらに、新しい「iPhone」が今週米国で発売される。これはAppleにとって、最もホットで利益をもたらす製品だ。そして、来週に発表を予定している四半期決算は、再び過去最高となる可能性が高い。
しかし人々が疑問に感じているのは、これから数年後、あるいはもしかしたらもっと近いうちに何が起こるかである。ここ10年間で信じられないような復活を遂げ、参入したほとんどすべての業界を変えたテクノロジ企業として、Appleはその魔力を保てるのだろうか。Cook氏は、同社の歴史の中で独自の立場を切り開いて、Apple製品の組み立て方法を変えるという役割だけでなく、Apple製品のあり方や、受け止められ方をはっきりと決める役割も担うようになるだろうか。
それは全くもって未知数だ。理由の1つとしては、Jobs氏が同社に復帰して以来、Appleの顔であり続けたことがある。Cook氏はJobs氏の医療休暇中に代理を務め、同社の日常業務を何年もこなしてきたが、一般の人々から見れば、Appleを率いていく人物として注目され始めたばかりだ。何かが成功か失敗かを判断する場合に、「Steveが今後も戦略的意思決定に関与していく」ことはもうない。そしてAppleは、将来の製品やサービスに関して厳しい目にさらされるようになる。Jobs氏の辞任前に決められた長期ビジョンなら何でも、人々はJobs氏がそれにどの程度携わっていたのか、あるいはいなかったのかと考えるからだ。
結局のところ、Appleは多くの優秀な幹部によって、立派に運営されている大企業だ。しかし、その貫禄やいわゆる「ビジョンに関する事柄」について後を継ぐのは、難しいことだろう。創設メンバーである幹部の喪失による悪影響が現れるには、何年もかかることがある。そして、それは一般的に、行動力の喪失や意欲の喪失、エンジニアではなくMBAを持つ人々が決断を下すようになるなど、よりとらえ難い形で現れる。Appleにもこういったことが起こるだろうか。何とも答えることはできないが、それらは今後数年間のリスクとなるだろう。
人々が変化の兆候を見つけようとした最初の場面の1つが、同社が先週開催したiPhoneのイベントだった。批評家は、Cook氏の初めての舞台と製品そのものの両方を退屈だと酷評した。これは1つには、批評家がそれを、Jobs氏がわれわれに期待させていた、ある理想の形と比べていたからだ。そして本当のことを言えば、Cook氏はその影から決して抜け出せないかもしれない。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」