ジェットパックはまだ手に入らないかもしれないが、近いうちにクレジットカードは過去の遺物になるだろう。少なくとも、財布に入れられることはなくなるはずだ。
その実現の一助となるテクノロジが近距離無線通信(NFC)だ。近距離にあるデバイス間で情報を交換できるという素晴らしい技術である。これまでのところ、NFCの主な用途は決済で、具体的には小売店のPOS端末で多く使用されている。実際に、銀行のクレジットカードにNFCチップが埋め込まれていることも多い。
NFCチップの次なる開拓分野はスマートフォンだ。財布と同様、スマートフォンも人々が常に持ち歩くものになった。さらに重要なことに、モバイルアプリケーションストアの登場によって、スマートフォンがユーザーの銀行口座やユーザーの携帯するカードの一部とクレジット情報を直接つなぐことができると考えられるようになった。
1年近く前から、さまざまな特許出願書類や報道が、Appleが同社のデバイス、具体的には「iPhone」にNFCを追加する可能性を指し示している。しかしいずれも、Appleが実際に準備しているものに関して、明確で十分な裏付けのあるものではない。米CNETはモバイル決済の現状について2人のNFC専門家に話を聞いたところ、AppleはNFCチップをデバイスに搭載することだけでなく、それを実現するためのインフラストラクチャとパートナーシップの構築に関しても問題に直面しているという。
ただし問題の本質に触れる前に、そもそもAppleがなぜNFCに挑戦しようとしているのかを理解しておく価値はある。簡単に言うと、NFCには巨大なビジネスチャンスがあるからだ。
Kony Solutionsの製品マーケティング部門を率いるDavid Eads氏は米CNETに対し、「米連邦準備銀行(FRB)によると、2010年の米国における電子決済は40兆ドル規模だったという。したがって、その数字の1%がモバイルで決済されるようになるごとに、4070億ドルの取引が発生する」と語った。
Eads氏にはモバイル決済業界での経歴があり、モバイルコンサルティング企業のMobile Strategy Partnersを創設したほか、mFoundryとTealeaf Technologyで役職に就いていた。同氏の説明によると、4070億ドルという魔法のような数字には、「交換手数料」という大きな金額が含まれており、さまざまな当事者が手数料から取り分を得ているという。その額は4070億ドル当たり40億~60億ドルになる。また、小売店は使いたいカードプロバイダーや決済プロバイダーを選ぶことができるため、手数料を得ているさまざまな当事者の間で競争が促進される。
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