BallmerのCEO在任中にMicrosoftが最も時間を割かれた分野の1つが裁判関連だ。Gatesが自身の今後の身の振り方を初めて詳細に説明した当時のMicrosoftには、係争中だった独禁法訴訟の解決策として、米国司法省が同社の分割提案を検討しているとのニュースが入っていた。判事はこのような分割を命令したが、Microsoftは上訴審でこの判決を覆し、その後、司法省との歴史的な和解を成立させた。
Ballmerと同社法律顧問のBrad Smithはそれ以来、Microsoftが抱える多くの訴訟問題の解決を進め、Sun MicrosystemsやAOL Time Warnerなどのライバル各社と次々に和解したほか、多数の消費者集団代表訴訟でも和解に漕ぎ着けた。
「最後まで争って破滅的な判決を受けるよりも、リスクを最小限に抑えてたような格好だ」(Rosoff)
Rosoffは、これらの和解がBallmer時代を象徴する幅広い方向性の1つだと考えている。「同社はBallmer体制下で多少慎重になった」(Rosoff)
初心に帰る
Microsoftは1990年代後半、ケーブルテレビや通信企業各社に数十億ドルを投資し、MSNインターネットサービスや各種のウェブ上での消費者向けサービスなど、多数の分野に社内の開発資源を分散していた。
「彼らは、ソフトウェアの販売に再び集中するようになった。これにはBallmerの功績もある。同氏には利益の得られる分野が分かる」(Rosoff)
同時に、Microsoftは引き続き技術ポートフォリオの多様化を進め、IT市場への進出拡大も果たした。エンタープライズソフトなどの新分野にも参入したほか、Xboxビデオゲーム機や、そのほかの各種メディア指向製品を発売し、自社をホームエンターテイメント業界の主要ベンダーに位置づけた。さらに同社は現在、PC向けセキュリティソフトウェア市場への参入を積極的に推し進めている。同社は、スパイウェア対策市場参入に向けた初めての製品のベータ版を今月初めに公開し、今年中に行われるウイルス対策ソフトウェアアプリケーションの発表計画も詳細を明らかにしている。
Gatesにとっては、この交代によって技術プロジェクトにつぎ込める時間が増加したが、しかし第2,第3のGatesが登場しないと問題の解決も難しいようだ。
Rosoffによると、創業当初はほぼすべての製品に対して「Billチェック」が行われていたという。だが、現在はチェックの段階でGatesのレベルまで上がってくるプロジェクトはごく一部に限られている。
Rosoffは、「Gatesがチェックをすることは以前より難しくなった」と語っている。同氏によると、GatesはTablet PCや、次期バージョンのWindowsであるLonghornなど、少数の重要なプロジェクトにしか積極的に関与していないという。だが、Gatesがここまで積極的に関与しても、Longhornはスケジュールが遅れ、大幅な機能縮小も余儀なくされている。
一方、Gates個人としては、Bill and Melinda Gates Foundationを通じた大規模な慈善活動をさらに拡大している。同財団は、約270億ドルの寄付実績を誇り、先月発生したスマトラ沖の津波の救援活動から、世界中の教育システムに対するIT資源改善活動まで、さまざまな貢献をしてきた。純資産約466億ドルで世界一の富豪として認められているGatesも、以前の傲慢で冷淡なイメージから、あかぬけたメディアの人気者へとイメージチェンジを行っている。
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