2月15日に開催した第3回「モバイルビジネス研究会」では、前回、キャリアの姿勢に非難が集中したように、国内端末メーカーの姿勢が厳しく問い質された。
「メーカーは世界市場に挑戦する気はあるのか?」「あるに決まっている」――。
携帯電話における国際競争力低下を背景に、販売奨励金制度やSIMロックの是非など業界の根幹を見つめ直す目的の同研究会。今回も激しい議論がやり取りされ、業界の主要プレイヤーの内向き姿勢が鮮明に浮きぼられる結果となった。
最初のプレゼンはKDDIの渉外・広報本部長 執行役員の大山俊介氏だ。前回のプレゼンテーションでは、研究会での懸案に対してNTTドコモがことごとく消極的な姿勢を見せたことに批判が集中した。そのためか、KDDIはMVNOや販売奨励金制度の是正については比較的前向きな姿勢を強調。ドコモが非難を浴びた「MNOとMVNOによるWIN-WIN」という構図も避け、ユーザーを加えた「WIN-WIN-WIN」という概念を示した。
ただし、auの認証課金システム開放についてはプレゼンテーションでも一切触れることがなかった。
大山氏は、KDDIが過去の累積設備投資額と売上額を対比した表を提示し、売上に比して莫大な投資を行ってきたと強調。携帯電話の急速な普及の裏にはMNOのたゆまぬ設備投資があったとアピールした。
また、過去5年間で移動体事業者3社の営業収益はほぼ横ばい(1.3%増)だったのに対し、携帯コンテンツ市場は毎年およそ30〜40%の成長が見られたとして、auがいち早く取り組んだ通信速度の高速化と定額制がコンテンツ市場の成長に貢献したとした。11.6兆円(2005年)規模に成長した移動体市場は、金融や商業、民生用電子機器など、関連産業の成長にも貢献したとし、その経済波及効果は26.8兆円にも上ると説明した。
加えて大山氏は、2006年度の端末数の成長では個人向け契約が4%に留まったのに対し、法人回線契約と通信モジュールの法人需要11%と、個人の倍以上の水準であったと説明。成長の主軸が個人利用から法人に移行しつつあると現状を解説した。
最後に、「販売奨励金によらないモデル」として、通信料が安いなら端末は高くてもよいと考えるユーザーに別の選択肢を提供するため、新たに「分離モデル」という概念を提示。分離モデルの実施時には、双方の「良いとこどり」をするユーザーを抑止するためにも、端末価格・料金プラン・契約期間をパッケージ化する契約が必要との考えを訴えた。
続いて端末メーカーの業界団体であるCIAJ専務理事の資宗克行氏。
国産端末メーカーの代弁者としての立場だが、資宗氏もMVNOに対する認識など一部を除いては、NTTドコモなどキャリアとほぼ変わらない主張を繰り返した。
同氏は国内携帯電話の出荷予測として「成熟市場であり買換需要が中心」として、今後の出荷金額は年平均1.6%のマイナス成長になると予測。さらに国内での競争激化と海外メーカー参入により、機能は増えても価格はむしろ下がるとして、年間出荷台数も2005年度の4700万台から2011年には4350万台まで減少すると予測した。
また、ユーザー実態調査から携帯電話の購入実勢価格は約70%が2万円未満であり、端末選びの基準として「低価格を優先」と回答するユーザーが73%も存在することを強調。販売奨励金制度によらないモデルで端末の実勢価格が上昇することは、ユーザーのニーズに合致していないことを暗にアピールした。
さらに、研究会での検討項目については「急激なビジネスモデルの変更は市場混乱を招く」とし、従来の販売奨励金を擁護する姿勢を鮮明に打ち出した。「高機能端末を用いた先進サービスによりユーザー利便性と長期的な利益向上につながる」「国内メーカーとキャリアとの連携が弱まれば、短期的にメーカーの技術開発力の低下を招きかねない」と、SIMロック解除論についても資宗氏は慎重な立場を崩さなかった。
MVNOの参入促進については、「従来のモデルに捉われない業界の活性化に向けた議論が必要」としながたも、その具体的な方策についての言及はなかった。
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