KDDIは7月25日、100%子会社のツーカーセルラー東京とツーカーセルラー東海、ツーカーホン関西の3社を2005年10月1日を期日に吸収合併すると発表した。ツーカー各社については、DDIポケット(現ウィルコム)と同様に他社へ売却する可能性もあったが、KDDI本体に吸収されることで決着した。
小野寺正社長は、「来年にも実施されるナンバーポータビリティ制度や、新規事業者の参入など、今後のさらなる競争激化に対応するには、auとツーカーの営業販売網や設備、組織の統合による相乗効果を検討してきた結果、合併するのがもっともメリットが大きいと判断した」と説明した。そのうえで、「ツーカーの利用者には、当面このまま何も変わらずにサービスを継続し、auとのブランドと併存させる。ただ、将来的には約360万人いるツーカーユーザーの他事業者への流出を防ぐために、ツーカーからauへ機種変更できたり、auの家族割りが適用できたりするようにするなど、具体的なビジョンや計画をこれから詰めていく」としている。
しかし、ここで述べられた機種変更や家族割りの適用など、ツーカーとauのサービスの融合について小野寺社長は、「現状では制度面で問題がまったくないわけではないと認識している。これが、100%子会社のまま(資本関係のある別会社同士で)サービスの統合を図ると一層問題となる可能性も高い。こうした点も、本体に吸収合併した背景の1つだ」と語った。
この制度面について小野寺社長は、NTTグループに対する不満もぶちまけている。「『顧客が要望しているから』という理由で固定と移動の料金請求を1本化したいと社長が言っているようだが、私は非常に心外だ」と声を荒げた。電話会社選択サービスのマイラインを導入した際に、基本料金をNTTに支払い、通話料金をKDDIに支払うという方式に対してクレームが顧客から殺到したことを振り返り、「我々はNTTに対して基本料金についても我々が回収代行できるようにしてほしいと、総務省の前でもはっきり言った。その時点ではコストの問題があるなど四の五の言って、基本的にNTTは拒否していた。こう表現すると彼らは『何百億かお金がかかるときちんと報告した』と言うに決まっているが、彼らが今度NTTドコモと固定なりを統合するとしたらいったいいくらコストがかかるのか、はっきり示してほしい。NTTがグループ内で料金の請求を1本化するときには自由だというのでは、公正な競争もなにもないではないか」とさらに声を強めた。
そして、小野寺社長は続けた。「顧客のためにどんなサービスがいいかという議論は、われわれも当然しなければならない。しかし、NTTのこの話は別問題だ。NTTグループを見ると、持ち株会社の元でむしろ資本統合的にグループ政策を強めており、ここが最大の問題なのだ。私は、NTTが東西とNTTコミュニケーションズに分かれたときにも言ったが、完全に資本が分離されなければおかしい。JRが民営化して分かれたときには完全に資本分離されたので、たとえば東京駅を見ればわかるが、JR東海と東日本が窓口を分けて競合している。これが資本分離したときの競争のかたちだが、NTTグループはまったくの逆。資本分離がされていないから、グループ各社は持ち株会社を経由すれば何でもできる格好になっている」
ツーカーを存続させずに解散し、KDDI本体に統合する道を選んだ背景には、こうした思いもあるようだ。
今回の発表は、2006年3月期の第1四半期(2005年4〜6月)決算と併せて発表された。連結ベースでは、営業収入が前年同期比0.8%減の7142億6700万円とほぼ横ばいだった。しかし、営業利益では同1.9%減の878億1800万円と減少率が広がった。これは、主力のau事業が2桁の増収増益と好調だった半面、固定通信事業が割安な固定電話サービス「メタルプラス」の拡販に伴う費用増加が響いて116億円の営業赤字に転落したことが足を引っ張った。また、有利子負債の圧縮による利払い費用の減少が効き、純利益は同1.8%増の525億8700万円と増益を確保した。
なお、前年同期(2005年4〜6月)の数値には売却したDDIポケットの事業が含まれており、これを除いたベースの増減では、営業収入が同5.7%増、営業利益が同1.2%増、純利益が5.6%増と増収増益になる。
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