「KDDIだけでなく、NTTドコモの状況を見ても解約率がかなり低い水準にある。これは、番号ポータビリティが導入されたら(事業者の乗り換えを)考えようという人が増えているためではないか」--KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏は10月21日、2006年3月期の連結上半期決算(4月〜9月)を発表するとともに、市場環境について分析した。
auの解約率は2006年3月期第2四半期(7月〜9月)で1.21%となり、前年同期に比べて0.28ポイント改善している。この解約率は過去最低で、番号ポータビリティ制度が導入されるまではしばらく下げ続けると小野寺氏は予想する。
小野寺氏はau事業の今後について、「ドコモの動きよりもボーダフォンのサービスや端末の魅力が高まることで影響を受ける可能性がある」とコメントした |
実際、KDDIではユーザーがツーカーからauに乗り換えた場合に電話番号を変えずに済むサービスを10月11日から開始したが、「想定の倍以上の申し込みがあった」(小野寺氏)ため、18日から受け付けを一時中止している。「auに移行することに関心を持っていたユーザーがこのサービスを待っていたのだろう。この動きを見ても、番号ポータビリティへのニーズは高いと感じる」(同氏)
ただし、ユーザー獲得や囲い込みのための各種施策がauの好調を支えているという側面もある。auの9月末累計シェアは23.2%で、前年同月に比べて1.6ポイント上昇した。上半期の純増シェアでは54.5%とトップに立っている。着うたフルの累計ダウンロードが9月28日に2000万曲を超えるなど、高速回線を生かしたサービスが人気を集めているようだ。
au事業の収入は前年同期比10.4%増の1兆1178億円、営業利益は同29.0%増の1852億円となり、2ケタの増収増益となった。ただし2006年3月期第2四半期におけるARPU(契約者1人あたりの1カ月の利用料金の平均)は割引施策などの影響で7190円と前年同期比1.5%減となっており、契約者数の増加が業績を支えている。
ただし一方で、固定通信事業は苦戦が続いている。KDDIがNTTに代わって電話回線を提供する「メタルプラス」の開通工事が当初の予定よりも遅れているため利用エリアが広がらず、契約者数を伸ばせずにいるのだ。9月末時点で開通工事の済んだ電話局は870局で、契約者数は136万2000回線、開通数は67万7000回線にとどまっている。KDDIでは当初、2006年3月末までに1800局の開通を目標としていたが、これを1400局に下方修正した。3月末までには220万回線の開通を目指す。
このように契約者数が伸び悩んだことから、固定通信事業の収入は前年同期比3.6%減の2862億円と落ち込んだ。さらに、メタルプラスの販売促進費用がかさんだため、営業利益は前年同期の24億円から295億円の赤字に転落した。
全体の状況を見ると、2004年のDDIポケット(現:ウィルコム)売却に伴う影響を好調なau事業がカバーし、総収入は前年同期比0.2%減の1兆4687億7200万円、営業利益は同2.6%増の1666億7000万円で、営業利益率は同0.3ポイント増の11.3%となっている。
2006年3月期上半期(4〜9月)決算
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ボーダフォンが11月から特定の相手を対象とした通話定額サービスを始めることから、他社の動向が注目されている。ドコモは「プッシュトーク」というトランシーバ型の音声サービスで通話定額サービスに参入することを表明しており(関連記事)、KDDIでも同様のサービスは検討しているという。
ただし、通話定額サービスについては、「携帯電話はまず端末の魅力がないといけない。さらには、使ってもらえるいいサービスとそれに適した料金体系がないとARPUは上がらない。音声系のサービスに力を入れることがいいのかは疑問だ」と小野寺氏は話し、ボーダフォンのような通話定額サービスについては「今のところやるつもりはない」と断言した。
現在、総務省では固定電話と携帯電話の番号を一本化する案が検討されているが、これにも小野寺氏は疑問を呈する。「ユーザーははたして番号の一本化を望んでいるのだろうか。家にかかってくる電話は家族の誰が出てもいいような電話であり、携帯電話は個人にかかってくるもので、別の扱いではないか」
ただし、携帯電話に電話をかけて出なかった場合に固定電話に転送するようなサービスにはニーズがあると見ており、「慎重に見極める必要がある」(同氏)とした。
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