NTTドコモは10月19日、同社の契約者同士であれば定額で通話し放題となるサービスを発表した。対応端末を持つユーザー同士が利用でき、利用料金は月額1050円(税込み、以下同じ)。ただし年内は無料となる予定だ。
サービス名称は「プッシュトーク」。欧米ではPush to Talkと呼ばれる方式で、一方が話している間は相手は話せないトランシーバー型のサービスだ。1人が1回に話せる時間は最大30秒。2者間だけでなく、最大5台の相手に対して同時に話しかけられる。ただし、パケット網を利用した通信のため、数秒の遅れ(ディレイ)が発生する。
端末の側面にあるプッシュトークボタン |
使い方は次の通り。まず、話者は端末の側面にある専用の「プッシュトークボタン」を押して電話帳を開き、相手を選んだ上でプッシュトークボタンを押して発信する。相手が通話を許可した場合、プッシュトークボタンを押している間は発言できる。複数の人に同時に話しかけたい場合は、グループを登録しておく必要がある。
対応端末を持っているユーザーであれば、誰でも手続きなしに利用できる。ただし、月額1050円の定額制プラン「カケ・ホーダイ」を利用したいユーザーはこのプランに加入する手続きをする必要がある。カケ・ホーダイに加入しない場合は1プッシュ(ボタンを押して発言する)ごとに5.25円かかる。この通信料金は契約プランの無料通話分やパケット定額制は適用されない従量課金となる。なお、料金がかかるのはボタンを押して発言した側だけで、受け手側には料金はかからない。カケ・ホーダイは2006年1月より開始される予定だ。
プッシュトークについて、NTTドコモ執行役員プロダクト&サービス本部マルチメディアサービス部長の夏野剛氏は、「電話でもメールでもない、まったく新しいコミュニケーションだ」と話す。具体的にはグループで複数の車に分かれて旅行している場合に待ち合わせ場所を連絡したり、家に帰ることを家族に同時に伝えたりする使い方が考えられるという。「同時に話すことができないため、通話とは(市場を)食い合わない」(夏野氏)
法人でも利用できるよう、最大20名に同時通話できる「プッシュトークプラス」というプランも用意した。電話帳をPCからでも管理でき、1契約につき最大1000人まで相手先を登録できる。また、話しかけたい相手の状態がわかるプレゼンス機能が利用できるため、会議中や移動中の相手には話しかけないということも可能になる。
プッシュトークプラスの利用料金は月額2100円。別途、代表回線のみ管理料として1万500円かかる。
いずれのサービスも、対応機種は同日発表されたFOMA 902iシリーズのみ。なお、902iシリーズのラインアップは全6機種で、メーカーは三菱電機、富士通、NEC、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、シャープ、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズの6社だ。
夏野氏によれば、このように口の近くに端末を寄せてトランシーバのように話すのが正しい使い方だ |
Push to Talkは欧米ではすでに一部の通信事業者がサービスを提供しているが、夏野氏は「欧米では一部の機種同士でないと使えない場合が多く、今回のように複数のメーカーの端末間で利用できる例はあまりない。しかも欧米では法人向けのサービスで、プッシュトークのように一般の人のためのサービスは我々が調査した範囲ではみつけられなかった」と話し、プッシュトークが革新的なサービスであると強調した。
音声通話の定額サービスはPHS事業者のウィルコムが5月に開始して人気を集めた。携帯電話事業者ではボーダフォンが11月から家族間や特定のボーダフォンユーザー1名と定額で話し放題になるサービスを開始する。ただし定額制にすると利用量が急激に増えて回線がひっ迫する恐れがあることから、ドコモではトランシーバー型のサービスとした模様だ。
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