イー・アクセス、総務省に携帯電話事業の免許を申請--出資オファーが殺到

岩本有平(編集部) 、別井貴志(編集部)2005年09月29日 20時28分

 携帯電話事業への進出を目指すイー・アクセスの子会社であるイー・モバイルは9月29日、1.7GHz帯での携帯電話事業の免許を総務省に申請すると共に、イー・モバイルに米ゴールドマン・サックスが運営するファンドを通じて250億円出資することもほぼ決まったことを明らかにした。

総務省に向かうイー・アクセス代表取締役会長兼CEOの千本倖生氏

 携帯電話事業への新規参入は1.7GHz帯でソフトバンクも狙っており、すでに完全子会社のBBモバイルが9月5日に免許申請を一番乗りではたした。このほか、別の周波数帯でアイピーモバイルが9月30日に免許を申請する予定になっている。総務省は最大2社の新規参入を認める方針で、その結論は2005年年内に決まる予定だ。

 イー・モバイルは、総務省から免許が下りれば、2007年3月頃には一部地域で高速データ通信を開始し、2008年2月頃にはサービス提供地域を全国へ拡大すると共に、音声サービスを開始する計画だ。サービス開始から3年後には単年度での黒字化を目指す。

1.7GHz帯を利用した携帯電話事業の免許を申請2社
新規参入 ソフトバンク イー・アクセス
携帯電話事業子会社 BBモバイル イー・モバイル
新規参入免許申請日 2005年9月5日 2005年9月29日
音声サービス開始 2007年末 2008年2月
データサービス開始 2007年末 2007年3月
設備投資額 直接投資額は数百億円* 3000億円程度
*基地局など設備投資総額は数千億円とされるが、海外の機器メーカーが負担して、それをソフトバンクがリースする

 また、今回のゴールドマンの出資について、イー・アクセスおよびイー・モバイル代表取締役会長兼CEOの千本倖生氏は「出資がほぼ決まった」と話し、「もともと2000年のイー・アクセス設立時、最初に出資をしてくれたのもゴールドマンで、それ以来5年の付き合いになる。その間のイー・アクセスの経営を評価してもらった結果だ」と説明した。この出資については新聞報道されたため、イー・アクセスの株価は朝方に前日比9900円高(12%高)の9万800円まで一気に急騰した。終値は、前日比6800円高(8%高)の8万7700円だった。

 ゴールドマンは傘下のファンド「GSキャピタル・パートナーズ」を通じて、約250億円出資する予定だ。千本氏は以前から「第三者割り当て増資により資金調達し、2005年末までにはイー・モバイルの資本金(資本準備金を含む)を1000億円にまで増やしたい」と公言している。

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 イー・モバイルの資本金(資本準備金を含む)は、イー・アクセスが300億5000万円の第三者割り当て増資を引き受けた2005年8月16日現在で、303億5000万円(資本金自体は153億2500万円)だ。その後、8月31日には東京放送(TBS)が100億円の第三者割当増資を引き受けると発表された(関連記事)。TBSの払い込み期日は9月30日だが、「少し先になる可能性がある」(広報)と言う。ここに、今回ゴールドマンの出資の話が加わり、増資がすべて実施されれば資本金は約650億円になる。

 2005年までに目指している1000億円はあと350億円足りない。これについて千本氏は、「イー・アクセスが追加出資するとともに、国内外から出資のオファーが殺到しているので、条件が合うところを選びたい」と資金調達に自信を示した。オファーしてきている企業については回答を避けたが、千本氏は「TBSは放送局としてコンテンツを豊富に持っており、ゴールドマンはUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)などのコンテンツを持っている。国内外も含めて面白いコンテンツを持っている数社に出資を頼みたい」と話した。

 また千本氏は、他社とのローミングについて「割り当てられるかもしれない周波数帯は5MHz帯だ。しかしNTTドコモは100MHz近く、KDDIで数十MHzの帯域を割り当てられている。ローミングは帯域幅にハンディキャップがある状況での『不平等な競争』をフェアにする手段の1つだ。サービス開始時は大都市圏のみで自社のネットワークを提供し、他の地域はローミングで提供したい」と述べた。だが、「我々は(最終的に)我々の資金で自ら全国にネットワークを作る」と付け加えた。

イー・アクセス代表取締役会長兼CEOの千本倖生氏(左)と代表取締役社長兼COOの種野晴氏(右)「これからの産業は『モバイル』『ブロードバンド』。2年間かけて我々もやっとモバイル市場に参入できる」語った。

 ローミングはサービス開始から2年程度を目途に利用し、3年後には全国に自社インフラを整える考えだ。しかし、ローミングについては各社と事務レベルで交渉しているが、まだ具体的なことは何も決まっていない。本格的な交渉は免許が交付されてから進めるが、NTTドコモは積極的ではなく、「NTTドコモはビジネスライクに考えている。不平等な競争の解決になるかといえば疑問だ」(千本氏)と不満も漏らした。

 さらに、千本氏は携帯電話端末の開発について、「世界の3Gの汎用品をベースに付加価値を付けて開発する」と語っており、現在国内、海外のメーカーと交渉中だという。同社は現在、秋葉原にオープンした「ヨドバシカメラマルチメディアAkiba」にて、ワイヤレス・ジャパンで公開したコンセプトモデルのモック(関連記事)を展示し、端末についてのアンケートを募集しているが、「(アンケートの結果を考慮し)ユーザーの意向をくんだ端末を出していきたい」(千本氏)としている。

 同社は、免許が交付された際には、サービス開始から5年後にモバイル市場でシェア10%の獲得を目標とする。

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