モバイル関連の総合イベント「WIRELESS JAPAN 2005」が7月13日より東京ビックサイトにて開催されている。初日の基調講演では、NTTドコモやKDDIなど既存の大手携帯電話事業者以外にも、新たにワイヤレス分野で事業を展開しようと試みる企業が講演した。
その筆頭として講演したのが、YOZANの代表取締役社長兼CEOの高取直氏だ。YOZANは、高速無線通信規格のWiMAXを利用したサービスを展開すべく、現在実証実験を進めている。高取氏はWiMAXを選択した理由について、「WiMAXフォーラムなどの推進母体があることや、基地局や端末の供給に関する実現性が高いことはもちろんだが、何よりもWiMAXは国際標準となっている。国境のないサービスが提供できるのはWiMAXならではなのだ」と述べた。
「PHS事業では50億円の赤字を出したが、WiMAXで黒字転換する」と意気込むYOZANの高取社長 |
YOZANが、WiMAXによるワイヤレスブロードバンドサービスへの参入を表明したのは2005年2月のことだ。同社は6月に実証実験を開始し、12月にはサービスを開始しようとしている。このように短期間でサービスが準備できるのは、同社がすでにPHSのインフラを保有しているためだ。通常は新規にWiMAX基地局を設置する場合、設置するビルの選定から交渉、契約手続き、アンテナ新設工事などの手順を踏まなければならないため、開局までは4カ月から1年程度の準備が必要だとされている。しかし、YOZANはすでにPHSのインフラがあるので、WiMAX基地局へのリニューアルが容易で、開局までの期間は約1週間で済むという。
「過去数年間、市場からは常になぜYOZANが儲からないPHS事業を買収したのかと疑問に思われていた。だが、この設備を次世代通信に利用することができるのだから、われわれの選択は間違っていなかった」(高取氏)
YOZANが12月に予定しているのは、まずWiMAXの卓上送受信機Easy STの提供だ。同受信機は、2km以内にある256台のパソコンやPDAなどの端末に対してアクセスポイントを形成し、FWA型(固定無線アクセス)型のWiMAXを実現する。価格は、「最初は4万円程度での提供となるが、将来的に今の無線LANカードと変わらない程度で提供したい」(高取氏)としている。
また、PCやPDAに差し込んでワイヤレス通信を可能にするWiFi型PCカードを同じく12月に、WiMAX型のPCカードを2006年夏に提供する予定だ。その後、2007年にはモバイル型WiMAXを実現すべく、5GHz帯WiMAXと280MHz帯ページャーのデュアルモードカードを開発中だという。
YOZANでは、自社でサービスを展開するほかにも、MVNO(Mobile Virtual Network Operator)事業者としてWiMAXネットワークを他社に貸し出すことを計画している。MVNOのネットワーク提供モデルとして同社が想定するケースは、WiMAXネットワークを使った独自の通信サービスを提供したいとする地域通信事業者などを対象とした「小口回線卸型」、ワイヤレスブロードバンドを応用した会員制の情報提供事業者などを対象とした「大口回線卸型」、YOZANと共同で通信サービスを推進する各種サービス事業者を対象とした「共同企画型」の3つだ。高取氏は、「WiMAXネットワークは、新規事業の構築や事業拡大を目指す事業者の既存の枠にとらわれない多様な事業展開が可能となるものだ」と述べた。
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