ボーダフォンは7月12日、自社の通信設備をサービスプロバイダなどに貸し出すホールセール事業を新たに展開すると発表した。ユーザーの減少で売上が縮小する中、新たな収益の柱として育てたい考えだ。
他社の通信設備を利用して移動体通信サービスを提供する事業者は「MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)」と呼ばれる。国内ではPHS回線をウィルコムから借りてサービスを展開する日本通信があるが、携帯電話回線は貸し出す事業者がいないことから、MVNOは存在しなかった。ボーダフォンは強力なコンテンツを持つ企業などに回線を貸し出し、新規ユーザーの獲得を図る。
「例えば米国では、DisneyがSprintの回線を使ってDisneyファン向けに携帯電話サービスを開始する計画だ。同じように、特定のユーザーに向けてサービスを提供したい事業者は日本にもいる」(ボーダフォン代表執行役会長の津田志郎氏)
ただし携帯電話の新規参入事業者に対するローミングについては「まったくの白紙」(津田氏)としている。
なお、他社に通信回線を貸しだすサービスはイー・アクセスも検討中だ。同社は現在ADSL回線をISPに提供しており、携帯電話事業の免許を取得した際には同様のサービスを携帯電話でも行いたいとしている。すでにニフティ、トーカイ・ブロードバンド・コミュニケーションズとTOKAI、ソニーコミュニケーションネットワークが同社の回線を利用したサービスを検討している。
「ボーダフォンが苦境にあるのは、旧経営陣の意思疎通に問題があったため」と代表執行役社長のウィリアム・ティー・モロー氏(右)は話す
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ボーダフォンは第3世代携帯電話の不調などが原因で、苦境に陥っている。契約者数は2004年12月をピークに減少を続け、2005年5月には1500万契約を割り込んだ。6月には純増に転じたものの、「2位のKDDIとの差は開く一方だ」(津田氏)という状況にある。業績も低迷しており、2005年3月期の連結決算は、売上高が前期比11.2%減の1兆4700億円、営業利益は同14.6%減の1580億円となっている。
この状況を脱するため、既存ユーザーに対するサービスも強化していく。固定通信事業者と提携して、携帯電話と固定通信を融合させた「FMC(Fixed Mobile Convergence)」と呼ばれるサービスや、無線LANや高速移動体通信のWiMAXと3Gを融合させたサービスも展開する。ただし具体的なサービス内容や展開時期は明らかにしていない。
また、非接触ICチップの「モバイルFeliCa」を搭載した端末を今年秋に販売する。JR東日本が2006年1月から開始する予定の「モバイルSuica」サービスにも対応したいという(関連記事)。ただし、「性能試験の問題もあり、2006年1月時点でモバイルSuicaに対応できるかは未定だ」(津田氏)としている。
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