Bluetooth SIG(Special Interest Group)は5月4日、高速無線通信技術のUWB(ウルトラワイドバンド)を推進する団体と協力して、BluetoothとUWBに互換性を持たせると発表した(関連記事)。この2つの近距離無線技術が互換性を持つ意味とは何なのだろうか。来日したBluetooth SIGアジアパシフィックおよび日本担当マーケティングディレクターのエリック・シュナイダー氏に話を聞いた。
Bluetoothは通信距離が最大約10mの無線通信技術だ。通信速度は約1Mbpsだが、消費電力が少ないことから携帯電話やヘッドセットなどの周辺機器で採用が進んでいる。シュナイダー氏によれば、全世界でこれまでに25億個のBluetooth対応製品が出荷されているという。また、次世代ゲーム機のプレイステーション 3もBluetoothに対応する予定だ(関連記事)。一方、UWBは広い周波数幅を利用して、通信距離が10m程度であれば100Mbps以上の通信速度がでるとされている。
Bluetooth SIGアジアパシフィックおよび日本担当マーケティングディレクターのエリック・シュナイダー氏 |
シュナイダー氏によれば、UWB技術を利用することで、Bluetooth対応端末でもUWB並みの高速通信が利用できるようになるという。これにより、例えばPCからプロジェクタに高品位(HD)の動画を無線で転送できるようになる。
今回の取り組みは、Bluetooth推進企業とUWB推進企業の双方にとってメリットがあると同氏は話す。「UWB推進企業にとっては、自社の製品がすでに市場に出回っているBluetooth対応製品と通信できる。また、市場認知度の高いBluetoothのロゴを使ってマーケティングができるようになる。一方、Bluetooth推進企業は高速化によって、新しいアプリケーションに対応できるようになる」(シュナイダー氏)
同氏によれば、1年半から2年後には、BluetoothとUWBの両方に対応した製品が市場に出てくる可能性があるという。ただし、このスケジュールはUWBの標準化動向に左右される。
UWBの標準仕様はまだ策定されていない。これは、Intelなどが参加するWiMedia Allianceと、Motorolaが率いるUWB Forumという2つの団体が標準化をめぐって対立しているためだ。どちらの団体もIEEE(電気電子学会)の会合で、標準化に必要な75%以上の賛成票を集められずにいる。さらに、両者が歩み寄る様子は今のところ見られない。なお、Bluetooth SIGのボードメンバーにはIntelとMotorolaの両方が名を連ねており、Bluetooth SIGはどちらの団体に対しても中立的な立場を取っているという。
BluetoothとUWBの互換性が実現するためには、ほかにもいくつかの課題がある。まず、UWBの利用周波数の問題が挙げられる。UWBのために周波数が用意されている国は、現在米国くらいしかない。日本でもUWBに関する議論は進められているが、UWB向けに開放された周波数帯はない。
さらに、Bluetoothが利用している周波数帯は2.4GHz帯で、UWBが利用する予定の3.1〜10.6GHz帯とは異なるという問題もある。こういった問題に関しては、UWBの標準化動向を見ながら互いの技術陣が解決していくことになりそうだ。
なお、WiMedia Allianceの推進するUWBの規格をベースにした、USBを無線化する技術「ワイヤレスUSB」のバージョン1.0の仕様が5月24日に完成している。ワイヤレスUSBがBluetoothの競合になる可能性も考えられるが、シュナイダー氏は「ワイヤレスUSBの普及促進団体であるWireless USB Promoter Groupには、Bluetooth SIGのボードメンバーであるIntelが参加している。両者は競合するのではなく、共存できるだろう」と話している。
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