富士通とシスコシステムズは12月6日、ルータおよびスイッチ分野において提携すると発表した。この提携により両社は、ハイエンドルータの共同開発を行うとともに、マーケティングやサポートの枠組みも強化する。
富士通は、1998年よりシスコとグローバルなSI契約を結び、全世界でシスコ製品の販売を行ってきた。今回の提携は、販売のみならず開発分野にまで踏み込んだものとなる。この提携で両社はまず、シスコのハイエンドルータ向け最新OS、IOS-XRを共同開発する。シスコがルータ向けOSを他の通信機器メーカーと共同開発するのは今回が初という。
共同開発したIOS-XRが搭載される機器は、Fujitsu-Ciscoの共同ブランドの下で国内市場で富士通が通信事業者向けに販売する。同製品の提供開始は、2005年春を予定しているという。
左から、富士通 取締役専務 伊東千秋氏、同 代表取締役社長 黒川博昭氏、シスコシステムズ 代表取締役社長 黒澤保樹氏、Cisco Systems 副社長 ストラテジックアライアンスグループ スティーブ・スタインヒルバー氏 |
米Cisco Systems上級副社長 兼 ルーティングテクノロジーグループ ジェネラルマネージャーのマイク・ボルピ氏は、富士通との提携に至った背景について「日本はブロードバンド先進国。これまでブロードバンドのインフラ技術は米国のものが海外に広がるというパターンだったが、今では日本がその技術を利用し、インターネットのビジネスモデルも日本から世界に広まりつつある。ブロードバンドビジネスにおけるニーズも日本から多く出てくるので、シスコとしても日本で通用するものを提供できなければならない」と述べる。
富士通 代表取締役社長の黒川博昭氏は、「シスコは世界最先端のIP技術を提供しており、ルータ/スイッチの世界シェアは61%にものぼる(2003年度IDC調べ)。この技術と、富士通がミッションクリティカルなインフラを提供するにあたって品質へのこだわりを持っていることや、これまでの国内通信事業者とのビジネスでニーズを理解していることなどから、両社の強みを集結させ、顧客に対して質の高いソリューションが提供できる」としている。
富士通 取締役専務 伊東千秋氏によると、同社のネットワーク事業の総売上は現在年間約4000億円で、うちルータ/スイッチ事業の売上は400億円という。現状では黒字化が厳しい状況にあるというが、「今回の提携で経費節減と販路の拡大を図り、売上を5割増程度にまで伸ばしたい。できるだけ来年度中に黒字化をめざし、利益のあるビジネスとして確立する」としている。
国内の基幹系ルータ事業においては、10月1日に日立製作所とNECの合弁会社としてアラクサラネットワークスが誕生したばかり。業界内では、アラクサラ設立にあたって富士通にも資本提携の話があったのではという憶測もあるが、この点について伊東氏は「コメントできない」としており、アラクサラは今後良きライバルとなるだろうと述べるにとどまっている。
シスコは、日立やNECとも販売パートナー契約を結んでおり、富士通のみならず両社からもシスコ製品が提供されているが、「この関係は今後も変わらない」と、シスコシステムズ 代表取締役社長の黒澤保樹氏はいう。同氏は、「顧客に最適なソリューションを提供することが各ベンダーの務めだ。日立もNECも、われわれにとってパートナーとなることもあれば競合となることもある」としている。
今回の両社の提携が資本提携にまで拡大される可能性はあるのかとの問いに、富士通の伊東氏は「考えていない」としている。「ネットワーク事業においては、このまま単独で事業を続けるか、他社との提携で事業を行うかを議論してきた。今回シスコとの提携が最適だと考えたため、提携に至った。ただし、ルータ/スイッチ以外のネットワークサーバやモバイル分野では今後もライバル関係であることには変わらない」と同氏は述べた。
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