近距離無線通信技術のBluetoothは、注目を浴びながらもなかなか国内で普及が進んでいない技術の1つだ。しかしBluetooth標準化推進団体の担当者によれば、日本でもようやく市場に浸透し始めたという。
Bluetoothの標準化推進団体であるBluetooth SIG(Special Interest Group)は4月5日、同技術の普及状況に関する説明会を都内で開催した。会場ではKDDIが4月中旬に発売する予定の携帯電話機を使ったデモンストレーションも行われた。
Bluetoothは通信距離が最大約10mの無線通信技術。通信速度は約1Mbpsだが、消費電力が少なく、ソフトウェアのインストールなしに相互運用性が保たれる点が特徴だ。Bluetooth SIGは仕様の策定や普及活動などを行っている団体で、IBM、Intel、Microsoft、Motorola、東芝などを中心に、2000社以上の企業が参加している。
Bluetooth SIGマーケティングディレクタのアンダース・エドランド氏 |
Bluetooth SIGマーケティングディレクタのアンダース・エドランド氏によると、2003年のBluetoothチップセットの出荷量は前年比2倍の7500万個。2004年も同程度の伸びを見せ、1億3000万〜1億5000万が出荷される見込みだ。主な用途は携帯電話で、全体の3分の2を占めるという。エドランド氏は「今後4年間で世界の携帯電話の4分の3はBluetooth搭載になるのではないか」と話す。
日本ではBluetooth対応機器を見かけることはまだ少ないが、エドランド氏によると2003年度にBluetooth SIGが認証した製品のうち、約25%は日本メーカーによるものという。これは海外向け製品も含むためだ。ただしKDDIやNTTドコモがBluetooth対応機種をすでに発表していることもあり、「今後は(Bluetooth市場が)日本でも飛躍的に伸びていくだろう」と期待を寄せた。
会場ではKDDIの新機種「A5504T」のデモンストレーションも行われた。Bluetoothモジュールを付けたプリンタにデータを送信して直接印刷を行う様子や、トヨタ自動車の「G-BOOK」対応カーナビなどと接続し、カーナビのマイクとスピーカーを通して車内でハンズフリー通話をする様子が紹介された。KDDIが行った実験では、車のエンジンをかけてから約8秒でハンズフリー機能が利用できたという。
KDDI au商品企画本部 モバイルサービス部 インタフェイスグループリーダー 課長の藤沢修氏は「2004年10月頃から3G端末のBluetooth対応が始まり、年末にかけてBluetoothを利用したプリント需要が高まるだろう」と予測する。さらに「2005年4月頃には高級車だけでなく大衆車にもBluetooth対応ハンズフリー機器が搭載され、2006年4月頃にはハンズフリーの普及が本格化する」と自信を見せた。
近距離無線通信技術としては、ウルトラワイドバンド(UWB)を利用したワイヤレスUSBという規格もある。消費電力はBluetoothよりも多いものの、通信速度が480Mbpsと高速な点が特徴で、各社が製品化を目指して開発を進めている段階だ。エドランド氏はこの点について、「キーボードのようにUSBポートがあるものについてはBluetoothと競合するが、ヘッドホンなどにワイヤレスUSBを使うのは難しいだろう。Bluetoothは(すでに多くの携帯電話機が対応しているため)携帯電話機をワイヤレスハブとして使うこともできる。この点が有利だ」とした。
(写真はiPodに接続したもの)
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