アトランタ発--Russell Simmonsというヒップホップ界の有力者が23日(米国時間)、当地に集まったワイヤレス関連企業各社の幹部に対し、もう一度基本に立ち返り、まず主力商品である音声通話の改良に努め、それが片づいた後で、音楽ダウンロードのような新しいデータ中心のサービス開発に注力すべきだと訴えた。
「まず最初に、音声通話をきちん使えるようにすることだ」とSimmonsは述べた。同氏は、Def Jam Recordsの創業者で、ヒップホップ・カルチャーを米国文化の主流に持ち込んだ功績を持つ人物でもある。SimmonsとDef Jamは過去2年間、Motorolaと共同で18〜25才のユーザーを対象にした携帯電話の開発を行ってきている。「電話の目的は、あくまで会話することだ。だがそれがうまく機能していない」(Simmons)
Simmonsは、まるでこの話題が大きなタブーであることを察したかのように、「口にすべきではないのはわかっている」と即座に付け加えた。
Simmonsのコメントは、CTIA Wireless 2004の基調講演のなかで述べられたものだが、これは新たな収益源を求める携帯電話業界全体の方向性と真っ向から対立するものだ。各社が激しい競争を繰り広げるこの業界では、電話機の価格や通話料の低下が進み、また携帯電話用の内蔵MP3プレーヤーやステレオスピーカー、あるいはワイヤレス・ブロードバンドサービスといったデータ中心の機能の開発が進められるなかで、音声通話の品質改善や通話エリアの拡大は二の次となっている。
だがSimmonsの抱く思いは、米国の携帯電話ユーザーの大多数が共有するものだ。主要な顧客満足度調査のほとんどで、通話エリアの問題が顧客にとって一番の関心事だという結果が出ている。「我々が本当にうまくできたのは、顧客の意見に耳を傾けるということだけだった」とSimmonsは述べた。
この日の講演日程は、はからずもSimmonsの考えを参加者に浸透させることに役立ったようだ。同氏の講演は、Motorolaの新CEOであるEd Zanderと、電子機器メーカーのLG InfoComm USAの社長Juno Choの講演の間に行われた。二人とも、音声通話に関する話題にはほとんど触れず、むしろそれぞれの会社が、家庭のネットワーク化が実現した際に、それをコントロールするリモコンとして携帯電話を使うために、どのような取り組みを行っているかという点を強調していた。
各携帯電話会社は過去2年間に、音声サービスの品質改善に努めてきたが、まだ顧客の不満をなだめるには至っていないと、Jupiter ResearchのアナリストJoe Laszloは述べている。
Simmonsの発言は、現在携帯電話業界を分断するある問題に触れている。各社は現在ほとんどの利益を音声通話の収益から上げているが、しかし1社あたり数十億ドルにのぼる投資はすべて高速なネットアクセスを可能にする新しいネットワークの構築に注ぎ込まれている。こうした費用を回収するために、どの大手携帯電話会社でも、ダウンロード可能なアプリケーションやカメラ付き携帯電話による電子メールを使った写真転送などのサービスを開発し、販売している。
MotorolaのZanderは講演のなかで、データサービス関連の新たな展開についていくつかの話題を紹介したが、このなかにはBMGと共同で携帯電話向けの音楽配信サービスを開発することや、Good Technologiesと提携して企業向けのデータサービス販売を拡大するというものも含まれていた。
さらにZanderは、Motorolaでは自社の製品について「携帯電話」という呼び方を禁止しているとさえ語った。
「この製品は、これまで『携帯電話』という名で知られていたものだが、私は『micro-TiVo-video-iPod』という呼び方のほうが好きだ」とZanderは述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。
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