総務省は12月16日、携帯電話の番号ポータビリティのあり方に関して議論を行う研究会を開催した。3回目となった今回の会議では、番号ポータビリティを導入するという方向で議論を進めていくという総務省の方針が確認された。また、前回の会議で消極的な姿勢を見せていた携帯電話事業者は、導入そのものに反対しているわけではないという立場を強調した。
番号ポータビリティとは、利用者が契約する通信事業者を変更しても、同じ番号を引き続き使えるようにする制度。海外では欧米を中心に多くの国で採用されている。番号ポータビリティの導入により、名刺などの刷り直しや新番号の連絡、データベースの変更といった手間が必要なくなる。また利用者が事業者を変更しやすくなることから、価格やサービス面での競争が生まれ、利用者の利益につながるとされている。
ただし総務省で行った勉強会の試算によると、導入には915億円〜1487億円の費用がかかるという。そのため携帯電話事業者は番号ポータビリティよりも、費用があまりかからない番号案内サービスを展開すべきだとしていた。
第3回研究会の様子 | |
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議論の中で本荘事務所代表で経営コンサルタントの本荘修二氏は、11月に番号ポータビリティの施行を始めた米国の事例を紹介した。米国でも通信事業者から強い反発が起こり、導入に約10億ドルのコストがかかること、同制度がなくても利用者の3分の1は通信事業者を変えているから、番号ポータビリティは必要ないとの意見があったという。
しかし米連邦通信委員会(FCC)は消費者保護の観点から導入が必要と判断。また、番号ポータビリティの導入によって企業の効率性が高まり、イノベーションが加速化されることから、長期的には業界の利益になると紹介した。
携帯電話事業者は費用対効果に疑問
一方、携帯電話事業者は番号ポータビリティに反対しているわけではないとの釈明に追われた。NTTドコモ 取締役 経営企画部長の辻村清行氏は「誤解されているようだが、番号ポータビリティの導入コストによって自社の利益が減るから反対しているというのではない」とした上で、番号ポータビリティが利用されなければ導入にかかったコストが無駄になる可能性があると指摘。導入コストとメリットを定量的に計算した上で議論するべきだとした。
KDDI執行役員au事業企画本部長の沖中秀夫氏も、「番号ポータビリティをやりたくないと言っているのではなく、費用対効果に疑問がある。そこを見極めるためにも、まずは導入コストと時間があまりかからない番号案内サービスを提供し、並行して番号ポータビリティ導入に関する議論を行いたい」とした。
アジアネットワーク研究所代表の会津泉氏は、各国の導入コスト試算に比べて日本の試算は圧倒的に高いと指摘し、試算の数字に疑問を投げかけた。欧州電気通信局の調査では、オランダのシステム構築コストは約1億4300万円、スウェーデンは33億8000万円、香港は73億円〜146億円との試算が出ている。
これに対しては、システムにどこまでの機能を盛り込むか、どういった方法でシステムを構築するかによって額が異なってくるという意見や、海外の試算方法が公開されていないため単純な比較はできないという意見が出された。しかし東京大学名誉教授で議長を務める齊藤忠夫氏は「この額が高いか安いかというより、何の説明もなく金額だけ言われても議論ができない」と述べ、試算の前提などを明らかにする必要があると述べた。
最後に参加者から、今回の研究会は番号ポータビリティの導入を前提とした議論なのか、それとも導入の是非を問題にしているのかという質問がなされた。総務省の事務局は「番号ポータビリティをやるという方向で多面的な議論をして欲しい」と話し、今後の議論の方向性が確認された。
総務省では現在、携帯電話の番号ポータビリティのあり方に関して一般から意見の募集を行っている(詳細は http://www.soumu.go.jp/s-news/2003/031215_1.htmlに掲載。提出期限は2004年1月5日)。参考資料として携帯電話のナンバーポータビリティに関するアンケート結果や携帯電話事業者から提出された資料、研究会の議事録などが公開されている。
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