総務省は11月25日、携帯電話の番号ポータビリティに関する研究会を開催した。2回目となった今回は、携帯電話事業者4社がそれぞれ番号ポータビリティに対する意見を紹介した。番号ポータビリティよりも番号変更案内サービスの導入を推す声が多く、他の参加者と意見が対立した。
事業者のうち、最も番号ポータビリティに積極的だったのはボーダフォンだ。海外の事例を参考に、移転元事業者から移転先事業者への移行期間をできるだけ短縮すること、費用負担・回収の方法について慎重な協議が必要としながらも、ユーザーの利便性向上と公正な競争条件の確保のためには、番号変更案内サービスは不完全であり、番号ポータビリティが必要との考えを示した。なお導入には、必要な機能の仕様を確定した上で2年程度の期間が必要との試算も明らかにした。
一方、他の事業者は番号ポータビリティを導入するコストが大きいことから、まずは番号変更案内サービスを導入すべきだと主張する。
第2回研究会の様子。携帯電話事業者はそれぞれ番号ポータビリティに対する意見を紹介した | |
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総務省の試算によると番号ポータビリティの導入には設備投資が915億円〜1485億円、回線設備に関するランニングコストが年間13億円〜47億円かかるとされており、この他に販売店などにおける受付費用や運用コストも必要と見られている。これに対し、一定期間音声ガイダンスにより新番号を発信者に案内する番号変更案内サービスであれば、概算だが50億円程度の費用ですむ。また準備にさほど期間が必要なく、サービスがすぐに提供できるというメリットもあるという。
そこでNTTドコモやKDDI、ツーカーグループでは、まず導入が簡単で費用もかからない変更通知サービスを早期に実施して利用者の利便性を図り、その後の様子を見て番号ポータビリティの導入を検討すべきだと話す。
KDDI執行役員au事業企画本部長の沖中秀夫氏は、現在通信インフラのIP化が進んでいることから、交換機開発部門の整理縮小が世界的に進んでおり、新たな交換機の開発に大規模な投資を行うことは避けたいとの意見も示した。
また、ツーカーセルラー東京取締役管理本部長の松下英明氏は、受益者の負担によって費用が回収できない機能はニーズに対してオーバースペックであり、低価格で代替機能が提供できるのであれば、そちらをまず導入すべきと訴えた。
しかしこの意見には他の参加者から反論が寄せられた。日本経済新聞社編集委員兼論説委員の関口和一氏は、携帯電話番号が顧客の購買履歴などを追跡する上でIDの役割を果たしている場合があると紹介。番号ポータビリティの導入は利用者にメリットがあるだけでなく、企業のCRMにとっても重要だと述べる。
またアジアネットワーク研究所代表の会津泉氏は、設備投資が約1500億円かかるとしても、事業者4社で均等に負担して5年間で償却すると仮定すれば、1社当たりの負担は年間50億円程度になると指摘する。「事業者の年間の設備投資額を見たときに、そんなに高負担になるだろうか」(会津氏)と疑問を投げかけた。
総務省では第1回、第2回の研究会の議論を踏まえ、一般からの意見を募集する予定だ。総務省のホームページにて近日中に発表するという。
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