ブロードバンドへの賭け
AOLやMSN、YahooなどのISPがこのようなブランド提携戦略への転換を図ろうとする要因の1つは、ブロードバンドは高価で利益が出ないと判断する一方で、高速接続の市場競争に参入しなければ取り残されてしまうと、ISPが懸念を抱いていることだ。
しかし、この提携戦略には危険も伴う、とアナリストは指摘する。地域電話会社やケーブルテレビ側が、バックエンドでISPに対抗するサービスを提供したり、決済や顧客サービといった顧客関係の重要な側面を管理してしまうかもしれないからだ。
AOL、MSN、Yahooは何百万もの利用者を抱えている。インターネットにアクセスするために代価を支払う者もいれば、各社のコンテンツを閲覧したりサービスを利用したいために加入する者もいる。彼らにとってブロードバンドが使えるということは、より高速にネットサーフィンできるだけでなく、ビデオクリップや音楽のデジタルストリーミングといった“かっこいい”コンテンツが利用できるということだ。
さらに重要なことは、これらビッグ3(AOL、MSN、Yahoo)が、ブロードバンドで足場を築く必要性に迫られているということ。というのも、彼らのユーザーには、すでに職場などで高速接続に慣れ親しんでいる人の方が、そうでない人よりも多いからだ。うかうかしていると、他のブロードバンド接続業者に乗り換えられてしまう。特に深刻なのはAOLである。同社は3500万人ものダイアルアップ接続利用者を抱えており、新規加入者の伸び悩みに苦しんでいる。
そして困難なことは、ダイアルアップサービスのユーザーがブロードバンド接続にアップグレードした後も、彼らの心を捕らえ続けることができるかという点だ。AOLをはじめとするISPは、ダイアルアップユーザーに対して、ブロードバンドに移行するよう説得するだけでなく、その後も引き続き既存のプロバイダーを利用することが最良の選択であること納得させなければならない。
それは多くの理由から骨の折れる課題となるだろう。第一に、どの大手ISPも米国のすべての市場でブロードバンドサービスを展開しているわけではない。地域によってサービスに違いがあることがISPのマーケティング活動を困難なものにしている。第二に、地域のケーブル会社や通信会社に対抗しうるサービスを、より低い料金で提供しなければならないこと。AOLは月額利用料54.95ドルでブロードバンドの基本サービスを提供しているが、これは業界で最も高い料金設定となっている。
ケーブル会社やDSL事業者は、ネットワークをライバルと分かち合うことはできないとして抵抗してきた。そこでISPは、専用線サービスを手がけるよりも、これらの事業者との提携戦略に切り替える方が得策だと考えた、とアナリストらは分析する。
「現実として、ケーブル会社はネットワークの拡張や性能向上に対し数十億ドル規模の投資を行っている。だからこそ彼らはそれを保持していたいと心に決めたのだ」、と米ジャンコ・パートナーズのアナリスト、マシュー・ハリガンは説明する。
こうしたことのすべてが、ISPを提携戦略への転換に駆り立てている要因なのである。
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