米国サンフランシスコのモスコーンコンベンションセンターで開催された「Oracle OpenWorld 2010」。その基調講演のステージに、メインスピーカーとして富士通 執行役員常務の豊木則行氏が登壇した。米国で開催されるOracle OpenWorldのステージには、これまでほんの短い時間ゲストとして日本人スピーカーが登壇しコメントすることはあったが、ホストとして45分間にわたり、日本企業のエグゼクティブが講演を行うのは始めてのことだ。
2週間前にOracleのプレジデントに就任したばかりのMark Hurd氏に紹介され登壇した豊木氏は、最初に富士通がどういう会社かについて説明した。キーワードは「Human-Centric」、経済的であるだけでなく人間的に豊かな価値観を醸成することを大事にしビジネスを行っていると言う。そのために活用できるのが、各種のセンサ技術やユビキタスコンピュータ技術、さまざまなものをつなぐ各種デバイス技術などとのこと。この人間中心的なアプローチは、ある意味で極めて日本人的な発想とも言える。それを象徴するような日本の伝統技術や日本文化を解説する美しいイメージビデオが会場に流れると、会場からは感嘆ともため息ともとれる反応が返されていた。
次に、一転して高度なテクノロジを活用しビジネスを行っている様子のビデオ映像も流され、日本が文化と伝統だけでなく高度なICTを持っていることも伝えられた。知恵と技術を1つにし人と人をつなぐ、そうすることで「今まで考えられなかったような、まったく新しいものが生まれてくる」と豊木氏。1つの例として、日本で進化を遂げているカーナビゲーションシステムについて紹介した。地図に現在位置を表示し運転をサポートするだけでなく、モバイルセンサーと組み合わせることで新たなサービスが生まれているとのこと。その結果としてユーザーの利便性だけでなく、渋滞を減らすなどの社会的な損失の解消にもつながっていることが示された。このようにICTに各種センサ技術を組み合わせることで、「人間中心型のインテリジェントな社会を実現できる。富士通はこれからも世界で最初、日本で最初の技術を開発し、それを実現していく」と豊木氏は言う。
ここから、富士通のビジネスの歴史を振り返り、事務計算から汎用機に至り、海外企業への資本参加を経てグローバル化し、Sun Microsystemsと協業するまでの過程が再びビデオで紹介された。そして、ここ最近のビジネスの成果も伝えられる。1つの成果として取り上げられたのが、次世代スーパーコンピュータ「K(京)」の開発に携わっていること。このスーパーコンピュータを利用し、心臓の動きをリアルにビジュアル化できる様子が示され、これを利用することで高度なシミュレーションが可能となり、医療分野に大きな貢献ができるだろうとのことだ。Kは、2012年までには完成する予定だという。
また、7年間もの宇宙での活動後、この6月に地球に戻ってきた小惑星探査機「はやぶさ」についても紹介された。富士通では軌道に関する制御部分で宇宙航空研究開発機構に協力し、最終的には無事にはやぶさが地球に戻ったことに貢献した。このような宇宙開発分野も、富士通の重要なビジネスの1つとなっている。
もう1つ紹介されたのが農業分野でのICTの活用だ。センサを利用しリアルタイム監視を行い農産物の生産性向上にも富士通の技術が利用されている。単に生産物の様子を監視するだけでなく、ナレッジマネジメントで生産部分に人間の知恵やノウハウを取りれることで、より効率よく高品質の農産物の生産が可能になるとのこと。このように、「ICTの分野において、より人間性の高いものを目指している」と豊木氏。そして、Oracleとの強いパートナーシップこそが、この人間性の高いものを生み出すことにつながっていると指摘する。
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