季節はまさに夏真っ盛り。この記事をご覧になっている皆様の中にも連日の猛暑で夏バテ気味の方もいらっしゃるのではないだろうか。さて暑いといえば、今、映画館も大変アツいことになっている。夏休みに合わせ「インセプション」や「ソルト」、「踊る大捜査線 THE MOVIE3」など話題の映画が目白押しなのだ。
今回は、弊社のソーシャルリスニングプラットフォーム「BuzzMetrics」を用いて特に7月に話題となった作品として、スタジオジブリの2年ぶりの長編作品「借りぐらしのアリエッティ」とピクサーの「トイ・ストーリー3」をピックアップしてネット上での盛り上がりの様子を検証していきたいと思う。
早速だが、まず最初に確認したいのがネット上での口コミのボリュームである。
劇場公開日は「借りぐらしのアリエッティ」が7月17日(土)、「トイ・ストーリー3」が7月10日(土)と1週違いであったが、両作品とも口コミ数が劇場公開日に向けて増加している点が共通している。なお、いずれの作品もおよそ3カ月前(4月中旬)と1カ月前(6月中旬)という同様のタイミングで何らかのイベントを実施しており、公開日に合わせて計画的に話題づくりを行っていた様子がうかがえる。またイベントに反応して、公開日が近づくにつれてネット上の口コミも盛り上がっている様子がわかる。どちらも公開の翌週に一旦口コミのボリュームがピークをむかえており、これは両者のプロモーションがうまく消費者に届いた結果と言えそうだ。
アニメ作品はそれを制作した制作会社がブランドとして話題となるケースがあるが、次にブランドに関する口コミも合わせてボリュームを確認したい。作品名に関する口コミとブランド名に関する口コミをそれぞれ個別に集計したものが図表2である。なお「トイ・ストーリー3」については制作会社のピクサー関連のキーワードに加え、ピクサーを買収したディズニーに関連するキーワード(映画に関するもの)をブランド名として定義した。
4月4日(日)から7月31日(土)の17週間の両作品の作品名に関する口コミのボリュームはほぼ同程度となった。その一方で、ブランド名に関する口コミのボリュームでは大きな差が表れた。特に「ジブリ」の口コミ数は多く、「借りぐらしのアリエッティ」の作品名に関する口コミ数より多くなった。要因としてはプロモーションの一環で、ジブリ作品が7月2日から4週連続でテレビ放送されたことが挙げられる。ここではスタジオジブリのブランドの人気の高さが改めて浮き彫りとなったと言えよう。
一方の「トイ・ストーリー3」を制作したピクサーも非常に人気のある制作会社ではあるが、スタジオジブリの口コミほどは大きくならなかった。
最後に公開翌々週以降の口コミについても触れておきたい。ここで再度図表1をご覧いただくと「トイ・ストーリー3」の口コミ数は7月18日週に一旦減少したが、7月25日週では再び増加した。通常であれば口コミ数は公開翌週をピークに徐々に減少していくと予想できるが、これは地上波で「トイ・ストーリー」が放映された影響であろう。
ネット上に意見が反映されやすい映画に関する口コミはその作品がロングランヒットするかどうかの一つのバロメーターにもなるかもしれない。7月25日週は「トイ・ストーリー3」の口コミ数が「借りぐらしのアリエッティ」を上回ったが、この後、両作品の口コミがどのような推移を見せるのかは大変興味深いところである。
公開翌々週の口コミには映画を観た人の感想や評価が多くなるという点で、公開翌週の口コミとは異なる。周りの人が面白いという映画はやはり気になるものだ。反対に周りの人の評判が悪ければたとえ観たいと考えていた映画でも再度検討してしまうということもあるだろう。周りの人の感想はその映画がヒットするかどうかの一要素として無視できないものである。
本来であれば感想の内容も分析することにより、「鑑賞後、より周りの人にお勧めされている作品はどちらか?」など、より深い洞察を得ることもできるであろうが、まだ作品をご覧になっていない皆さまのためにここではあえて差し控えたいと思う。
どちらの作品も満を持して公開された人気作品であることには間違いない。映画を観た感想に「感動した」「泣いた」という意見も多く見られたのも印象的であった。皆さんもこの週末劇場に足を運んでみてはいかがだろう。暑い夏、映画館で目頭を熱くするのも悪くないものだ。
注:ここでいう口コミとは、インターネット上のブログや掲示板などに書かれた記事を指す(検索対象:ブログ、ミニブログ、掲示板、Q&Aサイト)
(ネットレイティングス アナリスト 西村 友博)
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