「世界27カ国に進出、海外含めて流通総額20兆円、海外取扱高比率7割」――。6月30日に開かれた楽天の国際事業戦略説明会で、代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は、同社の目標をこのように説明する。「日本企業をやめて世界企業になる」(三木谷氏)という楽天は、この1月のイベントで触れていたように、着々と海外進出を進めている。
2010年に入り楽天は、1月に中国の百度(バイドゥ)と合弁会社を設立。6月からは、インターネットショッピングモール「楽酷天(らくてん)」という名称で出店店舗の募集を開始している。
楽酷天の最高マーケティング責任者(CMO)兼シニア・バイスプレジデントであるユーハオ・ジャン氏によると、すでに数千の店舗が出展を申請しており、数百の店舗が審査に通過しているという。10月にはサービスを提供開始する予定だ。
また5月には、米Buy.comを買収したほか、インドネシアの複合メディア企業であるPT Global Mediacomと合弁企業を設立。さらに仏でECサイトを運営するPriceMinisterを6月に子会社化している。
2010年以前にも楽天は、2008年に台湾で現地企業と合弁会社を設立。翌年2009年にタイで現地企業の子会社化を実施している。これにより、楽天はすでに6カ国に拠点を置いていることになる。今後は、これらの国々を中心に周辺国への進出を予定しており、2010年度末までに10カ国へ進出するという。
三木谷氏は、楽天が海外展開を進める理由を二つ説明している。一つは、世界全体のGDPに占めるアジア地域のシェアが、2006年の24%から2050年には53%へと拡大が予想されること(日本は2006年の12%から2050年には3%へと落ち込む見込み)。もう一つは、小売り全体を占めるEC化比率が、日本の1.70%に比べて、仏が2.90%、米が3.50%、独が3.90%、英が7.30%と他国の方が盛んであるということを挙げた。
これらをふまえて、海外での流通総額の比率を現在の8%から30%へ、取扱高を現在の1%程度から70%へとそれぞれ拡大させる方針だ。流通総額は、現在の1.8兆円から10倍以上の20兆円にするとしている。三木谷氏は「(海外展開は)ごく自然な流れだろう。ECだけでなく、世界中に楽天経済圏を構築する」と意気込みを見せている。
このように海外進出を図る楽天は現在、グループ内の公用語を英語にする取り組みを進めている。2012年末までに、社内でのすべてのコミュニケーションを英語にするつもりだ。
この取り組みの背景には、各国に適したサービスを提供できるようにするという考えのもと、現地の人々とコミュニケーションを密にする狙いがある。いわば、世界企業になるための施策である。もう一つの施策として中国とインドで現地採用者数を3倍にするほか、経営陣も現地でヘッドハントし優秀な経営幹部の獲得、育成に努めるとしている。
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