予測不能だった2016年電機業界の5大トピック--IoTやAIに注力、大型M&Aも

 2016年は、電機メーカー各社にとって試練の1年だったといえるかもしれない。家電市場が低迷を続けるなか、前半の円高、後半の円安という為替の激動も業績に影響。経営の舵取りは困難を極めたと言っていい。さらに、2016年には、大型M&Aが続いたのも日本の電機業界にとっては大きな出来事であった。電機メーカーを取り巻く5つのトピックスを振り返ってみた。

東芝、シャープの家電事業が相次ぎ外資傘下へ

 2016年は、東芝、シャープの2つの大手家電メーカーが、外資系企業の傘下に入った。数多くの国内第1号家電製品を送り出してきた「名門」東芝は、2016年6月30日付けで、白物家電事業を担当する東芝ライフスタイルの株式の80.1%を、約537億円で、中国マイディアグループ(美的集団)に売却。104年の歴史を誇り、「目のつけどころがシャープ」な製品を送り出してきたシャープは、2016年8月12日付けで、台湾の鴻海精密工業が、3888億円でシャープの66.07%の株式を取得して子会社化した。外資傘下での再生が進められている。


2016年4月2日鴻海精密工業によるシャープの買収に関して、正式調印が行われた。 郭台銘氏(左)とシャープ前代表取締役社長の高橋興三氏

IoTやAIを活用した“つながる家電”が登場

 IoTやAIを活用した製品が国内各社から登場した。特にこの分野に積極的なのがシャープだ。たとえば、ウォーターオーブン「ヘルシオ AX-XW300」には、献立相談機能を搭載。食材や好み、その日の天候などをヘルシオに話しかければ、1000件のメニューの中から最適な献立を提案してくれる。しかも、作った調理を毎日学習するため、各家庭の嗜好や最近の調理履歴に配慮した献立を提案。食材やジャンルに偏りがある場合はバランスを考えたメニューを提案する。1年後には家庭ごとに異なったメニューを提案するようになるというから驚きだ。今後は、家電同士がつながり、それぞれが自律的に動作するような時代が訪れることが想定される。

ソニー創立70周年、カメラメーカーとしての存在感高める

 ソニーは、2016年5月7日に、創立70周年を迎えた。平井一夫社長は「歴史に甘えることなく、類まれなる創業者が築いた唯一無二の企業体を進化させ、次代につなげることが現経営陣の使命である。果敢に挑戦していく」と語る。100型で700万円という4Kテレビ「KJ-100Z9D」の発売のほか、「α7RⅡ」が同社のレンズ交換式では初となるカメラグランプリ2016大賞を受賞。新たに「α Plaza」を開設してサポート体制を強化。真のカメラメーカーとしての一歩を踏み出した点も特筆できる。一方で、50年目の節目を迎えていたソニービルの閉鎖を発表したのも話題を集めた。2017年度は中期経営計画の最終年度。営業利益5000億円以上という高い目標に挑むことになる。


2016年度経営方針説明会を開催し、代表執行役社長兼CEOの平井一夫氏

パナソニックが売上高10兆円計画を取り下げ

 パナソニックは、創業100周年を迎える2018年度に10兆円の売上高を目指していたが2016年、これを撤回し、8兆8000億円に下方修正した。パナソニックは、10兆円の売上計画を掲げたことが過去に2回あったが、いずれも未達。今回も「3度目の正直」にはならなかった。あわせて、2016年度の見通しも下方修正。「あまり思い出したくない1年」と、パナソニック代表取締役社長の津賀一宏氏は振り返る。だが「2016年度は、意思を込めた減益計画であり、将来に向けた投資を行なう1年」だとし、「2017年度の増収増益の実現、2018年度以降の増収増益の定着に向けて、足場固めと成長事業への仕込みを行なう」と続ける。それを裏付けるように大規模M&Aも推進しており、地盤固めは着々と進んでいる。

熊本地震がエレクトロニクス産業にも打撃

 2016年4月に発生した熊本地震は、エレクトロニクス産業にも大きな影響を与えた。ソニーは、デジカメや監視カメラ向けのイメージセンサなどの生産拠点である熊本テクノロジーセンターの生産を一部停止。デジカメなどの製品供給にも遅れが出て、業績にもマイナス影響が出た。パナソニックや三菱電機も部品工場や半導体工場の生産を一時停止するといった事態に陥ったほか、東芝でも取引工場の被災により白物家電の新製品の発売時期がずれ込むといった影響が出た。だが、回復に向けての積極的な取り組みが功を奏して、現時点での影響はないといえる。

 年初には予想もしなかった出来事が相次いだのが2016年の電機業界だ。年初には、シャープと東芝の家電事業同士の統合といった話も出ていたが、それが一転して、それぞれに外資系企業の傘下で再生を図ることになったことは、その最たる例だといっていいだろう。2017年は、電機メーカーにとって、果たしてどんな1年となるのか。2017年は酉年。相場の格言では、2016年の申年とともに、「申酉騒ぐ」と言われる。2017年も予想だしない出来事が起こるのだろうか。

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