藪氏が示したデータによれば、VR関連のハードウェアを開発している会社は世界に43社あるが、そのうち日本企業はSCEとFOVEの2社のみ。開発されているVRゲームは世界で約90タイトルで、うち日本は13タイトル。ハードもソフトも米国企業が最も多い。
なお、SCEによる3月16日の発表によれば、“PS VR向けゲーム”の開発タイトルは160本以上で、発売から2016年末までに50本以上のタイトルを発売予定。参入メーカーは、大手ソフトウェアメーカーからインディーズ(独立系)開発者まで230社以上が表明しており、うち日本企業は34社あるという。
Enhance Gamesは、水口氏が2014年10月に米国で設立登記した会社だ。米国を拠点とする理由は「米国にいないと、VRの肌感覚がユーザーレベルでも市場レベルでもわかりにくい」(同氏)ため。水口氏によれば、米国ではVRに関する投資や出資が一巡しており、ハードウェアからソフトウェアに移行し始めている状況だという。
2015年12月、SCEがサンフランシスコで開いたユーザーイベント「PlayStation Experience 2015」に登壇した水口氏は、PS VR対応の新作ゲーム「Rez Infinite」を発表した。そこで「みんな新しい体験を求めているんだなと、ひしひしと感じた」という。
「特に米国のユーザーは新しい体験を求める傾向が強い。スマートフォンのゲームにはエキサイトしない人が多い。ユーザーと話して思うのは、PlayStationは初代から2、3、4と進化してきた。絵や音がきれいになり、ネットにもつながったが、基本的には、四角形のモニタで遊ぶものだった。そこに大きなイノベーションがあったかというと、ないと感じている人がけっこういる。VRでその体験が変わることにエキサイトしている人たちが多くいる。それが肌感覚」(水口氏)。
藪氏も水口氏も、「マネタイズも含めたVR市場の立ち上がり」はゲームから始まるという意見だ。
藪氏がまとめたデータによれば、PS VRを利用するために必要なPS4の販売台数は、2015年度に世界で3770万台を超えた。オンラインストア「PlayStation Store(PS Store)」の会員数は2013年時点で1億1000万人で、月間アクティブユーザー数は6500万人にのぼるという。
また、PS Storeの月間の売り上げは、2015年夏頃までは100億円強だったが、その後、2016年1月には約195億円まで伸びている。そのうち約133億円がPS4のソフトの売り上げだという。藪氏は「まだPS VRが出る前の段階で、PS4はすでに1億人以上の会員と6500万人のアクティブユーザーが、月間195億円の売り上げを作っている。それを土台として、PS VRでのタイトルが2016年夏以降に出てくる形になる」と説明する。
水口氏はRez Infiniteを2016年秋から年末にかけて発売する予定。価格は未定だが、「いま考えているのは、売り切り。1本いくら、という形で売る」(水口氏)という。
「VRの開発環境は整っている」と水口氏。PS Storeなどデジタルでソフトを販売できることや、開発技術が進歩しているため、「昔に比べるとコストがかからない。開発面だけを考えても、たとえば2人月で100かかっていたところ、肌感覚で75くらいでできている」。
そんな環境の中で、VRゲームを開発するためにはほかに何が必要か。水口氏は「発想を変えること」だと説明する。「VRで新しいゲームをやりたい人は、ただゲームがやれればいい、とは考えていない。ゲームをVR化したからそれでOKではない。今までと同じ目線でVRに入っていっても、たぶん苦労すると思う」(同氏)。
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