ソフトバンクは3月9日、千葉県柏市にある同社の災害対策倉庫で、新たな災害対策装備に関する説明会を開催した。また同日には、社内公募の災害復旧要員による訓練の様子も公開された。
ソフトバンク災害対策室運用管理課 課長の米原裕雄氏によると、2011年3月11日の東日本大震災発生時、ソフトバンクでも4000以上の基地局が被害を受けたという。それを受けて同社では、衛星臨時基地局を使って被災した基地局の復旧を進めたものの、当時はまだ装備が十分でなかったと振り返る。
そこで、2011年から2013年にかけて基地局の災害に向けた備えを強化。震災当時は15台しかなかった衛星対応の移動基地局車を100台に増やしたほか、全国14カ所に災害対策倉庫を設置。そこに可搬型基地局を合計200台配備するなどして、早期に災害から復旧できる体制を整えてきた。
中でも災害対策倉庫内に配備された可搬型基地局は、女性2人でも90分で組み立てられ、ボタン1つで自動的に衛星を捕捉できるなど、早期に利用できる仕組みになっているという。ただし、米原氏によると、2015年に配備した設備の見直しを進めたところ、従来の可搬型基地局は重く、大きいため、運搬が容易ではないという声が上がったとのこと。そこで、より早期な復旧を実現できるよう、新たに小型の可搬型基地局を10台追加導入したという。
新しい可搬型基地局は、従来と比べ120Kgから96Kgへと、約20%の軽量化が図られているが、自動で衛星を捕捉する仕組みは継続して備えられているという。また3つに分割して運搬することが可能で、1つあたり約30Kgとさらに軽量化できることから、ワゴンや宅配便などでも運搬できるとしている。
ちなみに、この可搬型基地局は、既存の設備基地局に接続して早期にエリアを復旧することを前提としている。そのため、既存基地局のアンテナを利用することで、半径5Km程度のエリアをカバーすることも可能としている。ただし、新旧どちらの可搬型基地局も、早期復旧のために衛星回線を使用していることもあり、帯域的な問題からLTEには対応せず、3Gのみの利用になるという。
米原氏はもう1つ、災害からの復旧を進める上での大きな課題として“燃料”を挙げた。東日本大震災では、交通網の寸断などによって深刻なガソリン不足が起きたことから、可搬型の発電機を持ち込んでも、発電するための燃料の確保に苦労した。そこで、ガソリンに依存せず、代替の電源手段も用意することで、確実に電源を確保できる体制を整えたという。
その代替手段として目を付けたのが、電気自動車の技術を生かした「蓄電池」。同社では新たに蓄電池型のポータブルAC電源を配備し、可搬型発電機と並行して使用することで、ガソリン不足でも電源を確保できる体制を整えたという。このポータブル電源を用いれば、先に触れた新型の可搬型基地局であれば6時間は稼働させられる上、複数接続することでより利用時間を延ばすことも可能になるという。またポータブル電源は発電機と違って大きな音が発生しないことから、被災住民に影響を与えないよう、昼と夜とで電源を使い分けることなども考えているそうだ。
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